2025 caravan session1
From Japanese society for quantitative biology
セッション1 「生命を書く~定式化~」
1/11 13:30-15:00
Chair: 青木 一洋 (基礎生物学研究所)
13:30-14:00 「一遺伝子一項」説;線虫の感覚ニューロン活動の数理モデルと遺伝子との対応
- 木村 幸太郎(名古屋市立大学理学研究科)
- 要旨:20年ほど前の私は、遺伝学的解析が行われてきた線虫C. エレガンスの神経活動と行動を定量的に理解したいと考えていました。 純粋な実験屋である私はOISTのサマーコースに参加して、数理モデル化とは「あちこちからパラメータを寄せ集めてきてぶっ込むこと」と(勝手に)理解して、「いや、そうではなくて、できるだけ単一の実験系で測った数値を使いたい」と決心しました。そこから、C. エレガンスの匂い応答刺激を理解するために、匂い空間分布の継時変化を正確に測ってモデル化し、C. エレガンスの匂い感覚神経細胞2種類の活動をカルシウムイメージングしながら追いかけたりするなどして、いろいろなことを測定しまくりました。その結果、それら感覚神経細胞の活動は、匂い刺激の一階微分あるいは一階微分と二階微分の和の漏れ積分によって表され、特に学習して行動が変化する際には二階微分の項だけが消えると解釈できることが分かりました。さらに突然変異体の神経活動と比較することで、それぞれの項が特定の遺伝子に対応している(場合が多い)ことが分かりました。私は数理解析は素人なのですが、もしかしたら素人こその視点があったりしたのかも知れません。専門家の方々のご意見を頂ければありがたいです。
14:00-14:30 植物の形のばらつきから発生過程を推測する
- 北沢 美帆(阪大・全学教育推進機構)
- 要旨:TBA
14:30-15:00 ゆらぐ概日時計を正確にする
- 伊藤 浩(九大・芸術工学研究院)
- 要旨:概日時計の精度はどれくらいだろうか?近年の1細胞計測による細胞レベルの概日リズムの精密な計測によれば、植物では5%、哺乳類培養細胞では1%、シアノバクテリアでは0.5%程度の周期のぶれがある。注意しなければならないのが、こうした観察されたリズムは概日時計からシグナル伝達を経て出力されたリズムであって、分子機械としての概日時計そのものの精度ではない、ということだ。現在のところ、いまだ細胞内の概日時計のそのものの精度をはかることはできていない。では真の概日時計の精度は出力と異なるのだろうか?私達が行ったいくつかの数値シミュレーションによれば、シグナル伝達によって精度を高めることができる。さらに、下流の出力系タンパク質の分解レートを制御すること、および正弦関数的制御がゆらぎを小さくすることがわかった。これらの結果は位相モデルを使った解析的方法によって確認された。本講演では、これら理論的結果を検証するために進行中の一細胞解析から得た知見をまじえて、ゆらぐ概日リズムの世界を議論したい。
- 参考文献
- [1] Kaji et al. J Thor Biol 2023
- [2] Mihalcescu et al. arXiv 2409.05537