第4回年会セッション4
第四回年会 (セッション4)実験データと理論モデルの整合性:定量検証からの新発見
寺前 順之介 (理研・BSI)、青木 一洋 (京都大学大学院生命科学研究科)、御手洗 菜美子 (ニールスボーア研)、島本 勇太 (ロックフェラー大学)
日時
2012/1/9 14:00-16:00 セッション4
Chair
- 木村 暁 (遺伝研)
概要
神経情報処理における自発揺らぎの起源と機能
- 寺前 順之介 (理研・BSI)
分子混み合いの反応速度論的展開と実証
- 青木 一洋 (京都大学大学院生命科学研究科)
リボソームの交通整理:遅いコドンの使い道
- 御手洗 菜美子 (ニールスボーア研)
伝令RNA(mRNA)に転写された情報のたんぱく質への翻訳は、 リボソームによって行われる。一つのアミノ酸は、mRNA 上の塩基の3つ の並び(コドン)で表され、リボソームは、コドンを読み取りながら対応す るアミノ酸をつないでいく。この翻訳過程は複数のリボソームによって並列に行われること、リボソームがあるコドンを翻訳する速度は一般にコドンに 依存することが知られている。本発表では、コドンに対応した一次元格子上をリボソームが確率的に移動していく交通流モデルを用いた、翻訳過程の解析を紹介する[1,2]。実験データに定量的にフィットすることにより、翻訳頻度やコドンに依存した翻訳レートを決定し、衝突や渋滞などの効果を見積もったところ[1]、翻訳頻度の高いタンパク質のコドン配列は、遅いコドンを効果的に配置することで渋滞を軽減する傾向があることがわかった。また、実験で測定されたmRNAの半減期と、数値実験で予想されるmRNA上のリボソームの密度の相関を調べ、開始コドンに近い領域のリボソームの密度が低いと半減期が短くなる傾向を見いだした[2]。
参考文献:
[1] N. Mitarai, K. Sneppen, and S. Pedersen. “Ribosome Collisions and Translation Efficiency: Optimization by Codon Usage and mRNA Destabilization” J. Mol. Biol. (2008) 382, 236.[1]
[2] M. Pedersen, S. Nissen, N. Mitarai, S. L. Svenningsen, K.Sneppen. “The Functional Half-Life of an mRNA Depends on the Ribosome Spacing in an Early Coding Region” J. Mol. Biol. (2011) 407, 35.[2]
「紡錘体のマイクロメカニクス:粘弾性が生みだす構造安定性とその分子起源」
- 島本 勇太 (ロックフェラー大学)