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セッション3 「生命を聞く〜計測〜」
1/11 15:00-15:30
Chair: 舟橋啓(慶大)
1/12 10:00-12:00
Chair: 杉村薫(東大)
1/11 15:00-15:30 誘導ラマン散乱顕微法による細胞内動態の詳細解析
- 小関 泰之(東大・先端科学技術研究センター)
- 要旨:生体は多様な細胞から構成され、それぞれの細胞内で様々な細胞小器官が動き回りながら複雑に相互作用し、生命活動を維持していると考えられている。これらのメカニズムを解明するためには、生きた細胞内の複数種の分子を高い時間分解能と空間分解能で観察することが重要である。蛍光イメージングは、生細胞内の特定分子を可視化する方法として広く利用されているが、色数が5色程度に制限されること、小さな生体分子(例えば糖やアミノ酸)や薬剤分子の標識が困難であることなどの課題がある。こうした課題を克服する方法として、光を用いて分子振動を検出するラマン顕微法が注目されている。中でも、誘導ラマン散乱(Stimulated Raman Scattering, SRS)顕微法は、2色のパルスレーザーを用いて試料の分子振動を高感度に検出するイメージング手法として近年大きく進展した[1]。従来は、蛍光染色を行わず試料を観察する無標識イメージングがSRS顕微法の主要な応用として注目されていたが、近年では、ラマンプローブを用いた超多重イメージング法や、重水素標識分子を用いた小分子の代謝イメージング法などが登場し、生体イメージング分野での応用が急速に進展している。 本講演では、SRS顕微法の基本原理を解説した後、我々が開発した蛍光・SRS統合イメージングシステムを紹介する。さらに、ラマンプローブを用いた超多重イメージング[2]、重水素標識による代謝イメージング[3]、ラマン標識による薬剤イメージング[4]、機能性ラマンプローブを用いた多重センシング[5]および超解像イメージング[6]といった最新の研究成果について議論する。最後に、これらの技術の今後の展開について展望を述べる。
- 参考文献
- [1] J. -X. Cheng, W. Min, Y. Ozeki, and D. Polli, ‘Stimulated Raman scattering microscopy -Techniques and applications-,’ Elsevier, 2021.
- [2] J. Shou et al., iScience 24, 102832 (2021).
- [3] M. Kawaguchi et al., Anal. Chem. 96, 6643 (2024).
- [4] S. J. Spratt et al., Front. Chem. 11, 1141920 (2023).
- [5] H. Fujioka et al., J. Am. Chem. Soc. 142, 20701 (2020).
- [6] J. Shou et al., Sci. Adv. 9, ade9118 (2023).
1/12 10:00-10:30(オンライン講演)味覚受容体の機能と食性の関わりの解明
- 戸田 安香(明大・農学部)
- 要旨:味覚は、食物中の栄養素や毒物・腐敗に関する情報を取得する重要な化学感覚である。味は5つの基本味(旨味・甘味・苦味・酸味・塩味)に分類され、口腔の中にはそれぞれの味質を感知するセンサー分子(味覚受容体)が存在する。5基本味のうち、旨味と甘味は重要な栄養素であるアミノ酸と糖類の存在を示すことから、おいしい味(嗜好味)として認識される。脊椎動物では、クラスCのGタンパク質共役型受容体(GPCR)であるT1Rファミリーが旨味・甘味受容体を構成する。ヒトではT1Rファミリーのうち、T1R1とT1R3のヘテロダイマーが旨味受容体を構成しアミノ酸やヌクレオチドを、T1R2とT1R3のヘテロダイマーが甘味受容体を構成し糖を受容する。 我々は培養細胞を用いた味覚受容体の高感度機能解析技術を構築し、様々な生物のT1R受容体がどのような味成分で活性化されるのかを調べてきた。本発表では、鳥類や霊長類を対象とした研究を中心に、動物の食性に応じてT1R受容体のリガンドが変化してきた例を紹介したい。
- 参考文献
1/12 10:30-11:00(オンライン講演)Decording the inside of nueronal condensates through super-resolution microscopy
- 下林 俊典(京大・CiRA)
- 要旨:TBA
1/12 11:00-11:30 非平衡揺らぎに伴う細胞質流動化とモーター加速現象
- 水野 大介(九大・理学研究院)
- 要旨:細胞質は生体高分子やコロイドの濃縮溶液であり、その物理的状態は生命活動において重要な役割を果たす。例えばin vitroでタンパク質や細胞抽出液を生理的な濃度(細胞内における典型的な濃度)まで濃縮すると、ガラス転移やゲル化が進行し、完全に流動性を失う。しかしながら代謝に伴う非平衡揺らぎが存在する生きた細胞内では、同様に高い濃度でも細胞質の流動性が維持される。我々は、細胞内の非平衡揺らぎとレオロジーを、光ピンセットを利用したマイクロレオロジー法を用いて測定する技術を開発してきた。この技術を用いて、細胞競合、細胞内液滴のエイジング、ATPや細胞骨格の阻害、および細胞死などの状況下で、細胞内の代謝状態が細胞質の流動性や揺らぎに与える影響を評価した。得られた結果は、細胞が代謝に起因するエネルギーを用いて非平衡揺らぎを引き起こし、それが細胞質の流動化に寄与していることを示唆した。 細胞内の細胞質は、流動性を保ちつつも水よりは遙に粘稠である。こうした細胞内において、モーター蛋白質はvitroの最大速度よりも速く動作することが知られる。我々は細胞内における非平衡揺らぎの役割に着目し、vitroの計測系においてモーター蛋白質に人工的な非平衡揺らぎを印加した。その結果モーター蛋白質が加速することを見出した。しかしながら、人工的な揺らぎを最大限に印加しても、vitroの最大速度を超えられないことも分かった。細胞内における非平衡揺らぎが、細胞質の流動性やモーター蛋白質の加速に与える影響を、さらに空間分解能をあげて評価するための試みについても紹介したい。
- 参考文献
1/12 11:30-12:00 細胞内部応力ゆらぎの計測とその強度制御足場の設計
- 木戸秋 悟(九大・先導物質化学研究所)
- 要旨:生体の多くの領域は,細胞スケールの微視的非一様な剛性を持つ種々の組織から構成されており,一部の細胞は非一様力学場を長距離長時間に渡って自走する.このような非一様力学場を運動する細胞においては、増殖や分化などの細胞機能の制御と密接に関連する細胞内部応力状態に顕著な時間変動を被るが,その変動様式が細胞機能にどのようにフィードバックされるのかという問題に対しては系統的な知見は確立されていない. この問題に対して我々はこれまでに,細胞培養ゲルに対して微視的に非一様な弾性率分布を刻みこみ,細胞がその上を自発的に遊走する過程で内部応力状態のゆらぎを増幅させるバイオマテリアルの開発を進めてきた. 特に間葉系幹細胞(MSC)を対象とした場合、培養力学場の入力がその分化系統を決定するという知見に基づけば、細胞内部応力状態の非平衡度を高める当該の設計は力学場履歴を連続的に消去する効果も期待され、MSCに未分化状態を保持させる培養基材設計への応用につながる.具体的には,三角形の硬領域を持つ周期的非一様弾性場で間葉系幹細胞を培養すると,各領域間の完全非定住運動の過程で,硬・軟領域に依存した分化偏向が抑制され未分化性が維持された(分化フラストレーション現象).さらに,この培養を経たMSCでは,一様弾性場や通常のプラスティック皿での培養では見られない細胞運動関連機能および生存,増殖関連機能に関連する遺伝子群が広範囲に発現上昇し,これらはMSCの治療効果増強にも関与するものであったことから,このような培養モードをメカノ活性化培養と名付けた. このようなMSCのメカノ活性化のメカニズムに関して, 細胞内部応力の長周期ゆらぎと細胞核の力学的動態の影響に着目した研究を続けている. 本発表では, 細胞内部応力のゆらぎの度合いを細胞集団に対して計測する簡便なアプローチの開発について紹介し, 治療有効性を増強した幹細胞の識別を可能とする簡便な評価指標の捉え方について触れる.
- 参考文献