第3回年会セッション2

From Japanese society for quantitative biology

第三回年会 (セッション2)細胞メカニクスの定量生物学

講演者: 谷本博一(東大)、水野大介(九大)、末次志郎(東大)、鈴木孝幸(東北大)・森下喜弘(九州大)

日時

2010/11/27 15:15-17:15 セッション2

Chair

  • 澤井哲(東大)

概要

細胞の形態形成における脂質膜とアクチン細胞骨格の形態形成機構

  • 末次志郎(東大)

様々なチャネルや受容体はある特定の細胞、細胞内ドメイン、組織に局在するように細胞の形態と細胞機能は密接な関わりがあると考えられる。細胞の形態は、脂質膜とそれを裏打ちするタンパク質によって決められている。BARドメインスーパーファミリータンパク質は、そのBARドメインの立体構造によって脂質膜の形態を規定し、併せ持つタンパク質間相互作用のドメインによってタンパク質の分子集積を調節するタンパク質であると考えられる。それぞれのBARドメインタンパク質が機能する細胞膜の器官には、クラスリン被覆小孔、カベオラ、フィロポディア、ラメリポディア等がある。今回は、これらの研究の経緯と定量性の関係についても紹介させて頂く予定である。

四肢発生をモデルとした形態形成のロジックを解明するための定量的アプローチ

  • 鈴木孝幸(東北大)・森下喜弘(九州大)

形づくりのメカニズムは、分子、細胞、組織、器官という異なるスケールで起こる現 象の動的な関係性を明らかにすることで初めて理解できる。各細胞は生化学的・力学 的環境の履歴に基づいて遺伝子発現プロファイルを変化させ、細胞増殖や細胞死、分 化などの細胞応答を決定する。この中でさらに時間的、空間的に細胞応答が異なるこ とで器官固有の組織変形が生じ目的の形が作られる。形態変化と同時に筋骨格系など の解剖学的に異なる様々な組織の分化がおこり、器官としての空間パターニングが実 現される。
 こうしたマルチスケールなイベントを統合するための最初のステップとして、我々は生化学的な環境と組織変形の関係を定量的に調べることから研究を始めた。組織変形は数学的には写像x=φ(X)で表される。ここで、Xは各細胞の初期座標を、xは初期時刻にXにいた細胞が時間tだけたった後の座標を表す。いったん写像φが得られれば、各時刻各細胞周りの変形の様子は変形勾配テンソルによって定量することができる。発表の前半では、Fate map解析という変形に関する断片的な情報から変形写像φを推定するための方法を提案し、その方法をニワトリ後肢発生過程に適用した結果を示す。発生ステージによって体積増加率などの変形モードが段階的に変化する様子が明らかになった。発表の後半では、変形モードとモルフォゲンとしての拡散性分子の動的なシグナル活性の相関を調べるために、組織レベルでいかに生化学的なシグナルを定量的に捉えるか、その実験的手法とその結果の一部を紹介する。本研究では肢芽の細胞集団が受け取る拡散性因子のシグナル伝達を発光顕微鏡を用いてリアルタイムで可視化した。また発光システムは蛍光と比べて定量性にすぐれていることから、発光イメージングの今後の将来性についても述べたい。また本研究は現在進行中であり、今後どのように研究を進めていくかも含めて議論したい。

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