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解読の定量生物学 14:00 - 15:30

生細胞におけるmRNAからタンパク質への翻訳過程をリアルタイムで可視化、定量する技術の開発

  • 森崎 達也(コロラド州立大学)
  • 要旨:遺伝子の発現はDNAからmRNAへの転写、および、mRNAからタンパク質への翻訳という2つの過程により制御されている。近年、生細胞においてDNAから転写されるmRNAを1遺伝子の精度で可視化、および、定量することが可能になり、生細胞での転写における極めてダイナミックな遺伝情報伝達過程が明らかになってきた。しかしながら、もう一つの重要な過程である翻訳に関しては、これまで生細胞においてリアルタイムで可視化することはほぼ不可能であった。 そこで我々は抗原抗体反応を用いることで、生細胞内における1分子のmRNAからのタンパク質の翻訳を可視化する手法を開発した。これにより得られる画像データを解析することで、ポリソーム(1分子のmRNAとそれを翻訳する複数のリボソーム、さらに、これらのリボソームにより翻訳され新規に合成中のタンパク質の複合体)の移動性および大きさを定量し、さらに生細胞における翻訳伸長速度、翻訳開始速度などの翻訳のダイナミクスを定量することを試みた。本発表では、この可視化システムの概要、および、3つの大きさの異なるタンパク質を例に翻訳のダイナミクスについて紹介する。
  • 参考文献

[1] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27313040

[2] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27313023

ヒト脳神経活動の定量モデル化と解読

  • 西本 伸志(国立研究開発法人情報通信研究機構 脳情報通信融合研究センター)
  • 要旨: 私たちの自然で何気ない日常生活は、多様で複雑かつダイナミックな感覚入力を処理する高度な脳機能によって支えられています。脳神経科学のゴールの一つは、このような自然な体験を支える脳情報処理の仕組みを解明することです。近年、機能的磁気共鳴画像法(functional Magnetic Resonance Imaging; fMRI)を代表としたヒト全脳活動の非侵襲イメージング技術、およびその計測結果を解析するための数理解析技術の発展に伴い、動画視聴下などの自然で複雑な条件下におけるヒト脳活動の定量理解を目指す研究が進展しています。本講演では、動画視聴下における脳活動の予測モデル構築を介した、ヒト大脳皮質における自然視覚表象解明や、その逆問題としての脳活動からの知覚体験デコーディング、またそれらの応用に関する展望等についてご紹介いたします。
  • 参考文献

[1]Huth AG, Lee T, Nishimoto S, Bilenko NY, Vu A, Gallant JL. Decoding the semantic content of natural movies from human brain activity. Frontiers in Systems Neuroscience. 2016, in press

[2]https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23259955

[3]https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21945275

超視野2光子励起顕微鏡による運動野階層性情報処理機構の解析

  • 寺田 晋一郎(東京大学)
  • 要旨:脳は1000億もの神経細胞が複雑なネットワークを形成し、全体としてひとつのシステムとして機能することで、複雑かつ柔軟な情報処理を可能としている。近年、カルシウム濃度感受性分子と2光子イメージングを組み合わせることにより、生きた個体において複数の神経細胞の活動を単一細胞レベルで継続して計測することが可能となった。私が所属する研究室では頭部固定下マウスにおける自発性レバー引き運動課題を開発し、その際の運動野の神経活動を2光子イメージングすることで、動作を反映した微少な神経ネットワークの存在を明らかにした(Hira et al.,J.Neurosci.,2013)。また、14日間に渡る運動学習中の同一神経細胞集団の活動を追い続けることで、大脳皮質において起こる層に特異的な神経活動の変化をとらえてきた(Masamizu et al., Nat.Neurosci.,2014)。このような局所回路や、層構造による情報処理機構については一定の理解が進みつつあるが、一方で、現行の2光子励起顕微鏡の観察視野は0.5mm程度に限られていることから、その対象は単一領野内に限定されるという限界があった。脳という全体がひとつのシステムとして機能している対象の理解には、領野間に渡る情報処理機構の理解は必須であるにもかかわらず、機能的MRIや脳波など、比較的空間解像度が荒い計測方法に限られていた。そこで私は、領野間の神経活動を単一神経細胞解像度で捉えることが可能な2光子カルシウムイメージング法の開発、並びに、領野間における情報の流れを捉えられる頭部固定下マウスにおける行動課題の開発をそれぞれ行い、大脳皮質領野間情報処理機構を解明することを目的とした研究を行っている。領野間の神経活動を単一細胞解像度で捉えることが可能な系として、新たに超視野2光子励起顕微鏡を開発した。この顕微鏡は従来型の2光子励起顕微鏡の対物レンズ下に新規開発した光学素子を配置することで、最大6mm離れた2領野間で単一細胞解像度2光子イメージングを可能とする技術である。発表では素子を開発するにあたって行った設計、3Dプリンティング、機械加工、制御ソフトの開発等の汎用的な試作・開発手順について共有するとともに、マウス運動野における階層性情報処理機構について明らかとなった点について紹介する。