第4回年会セッション3

From Japanese society for quantitative biology

第四回年会 (セッション3)定量的アプローチの深化: 定性的な概念を定量化で捉える

入江 直樹 (理研・CDB)、谷口 雄一 (理研・QBiC)、山縣 一夫 (大阪大学微生物病研究所)

日時

2012/1/9 10:00-11:30 セッション3

Chair

  • 小林 徹也 (東京大学)

概要

観念形態学の古典問題に定量化で挑む

  • 入江 直樹 (理研・CDB)

 受精卵から成体ができるまでの発生過程をみると、異なる動物間でも似た形態・構造が現れる事に気付きます。この理由として、「発生は進化を繰り返すからだ」と説明したのがErnst Haeckel、1860年代のことです。進化と発生の関係性解明に向けて、あれから我々の理解は進んだのでしょうか?
 焦点は発生プログラムの進化的な距離・多様性をどうやって数値化するかにかかっています。しかし、これまで「見た目の類似性」という再現性に乏しい指標により主な議論が進められたため、当該分野は混沌としたまま現代生物学に統合されずといった状況が続きました。
 今回我々は、進化と胚発生の関係性解明のため、全胚由来の遺伝子発現プロファイルをGeneChipを使い種間比較し、それを数値化・定量化することで従来の仮説群を検証しました。形態情報こそ評価していないものの、方法論はメタゲノム解析のアナロジーとも言えます。慎重な統計解析のもと、我々の結果は発生砂時計モデルと呼ばれる仮説が提唱するように、咽頭胚期に代表される発生の中間的時期が保存されていることを示唆していました。
 妥当性が示唆されたモデルは、脊椎動物のボディプランについて新たな理解を与えるとともに、精密機器として発生現象をとらえることの危うさを示唆するものとも言えます。発表ではこうした点を含め幅広い議論を大歓迎いたします。

参考文献
1. [1]
2. [2]

1生細胞内の遺伝子発現の定量化とモデル化

  • 谷口 雄一 (理研・QBiC)

単一細胞のレベルでは内在するmRNA数とタンパク質数とがたえず乱雑に変動している.このため,ひとつひとつの細胞は,たとえ同じゲノムをもっていても,それぞれが個性的な振る舞いを示す.我々は,単一細胞内におけるmRNAとタンパク質の発現プロファイリングを単一分子検出レベルの感度で行うことにより,単一細胞のもつ特性の乱雑さをシステムワイドで定量化し,そこにあるゲノム共通の法則性を明らかにした(Taniguchi et al., Science, 2010).そのために,蛍光タンパク質遺伝子をそれぞれの遺伝子のC末端に結合させた大腸菌ライブラリーを1000株以上にわたって作製し,マイクロチップ上で単一分子感度での計測をシステマティックに行うことにより,それぞれの遺伝子におけるmRNAとタンパク質の絶対個数,ばらつき,細胞内局在などの情報を網羅的に取得した.その結果,全体の98%の遺伝子は発現するタンパク質数の分布において特定の共通構造をもっており,それらの分布構造の大きさは量子ノイズやグローバル因子による極限をもつことが判明した.本講演では、研究で確立した単一細胞内遺伝子発現の定量的1分子解析の方法論と、解析により得られる網羅的情報の統計的解析について詳しく解説する。

References
1. [3]

哺乳動物初期胚発生における補償作用を定量化してみる

  • 山縣 一夫 (大阪大学微生物病研究所)


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