Fukui caravan session2

From Japanese society for quantitative biology
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'’'セッション2 「動きの力と生理」

11/22 13:00-15:15

13:00-13:15 物理学と生理学から考える植物の動き

  • 北沢 美帆(大阪大学)

13:15-13:55 オジギソウの運動の速さを生み出す分子機構

  • 真野 弘明(基礎生物学研究所)
  • 要旨:植物の運動は一般に非常に遅いが、一部の植物に見られる高速運動は、植物にも動物に匹敵する速さで動き得る進化的潜在能力を示している。オジギソウ(Mimosa pudica)はその代表で、葉は刺激後数秒以内に閉じ、この「おじぎ運動」は可逆的に何度も繰り返すことができる。他の高速植物運動が座屈などの構造的要素を利用するのに対し、オジギソウはそれらを持たず、細胞レベルでの機構解明に適したモデルである。本研究では、この運動に必須な2種のイオンチャネルを同定した。機械刺激受容型チャネルMSL10は刺激後に膜のイオン透過性を急速に高め、変異体では運動速度が大幅に低 下した。グルタミン酸受容体様チャネルGLR3は、多数の運動細胞の同調的活性化を担い、細胞外カルシウム流入による活動電位発生を介して機能していた。これらの結果は、オジギソウの速い運動がより遅い気孔開閉運動などと同様の膨圧駆動によって生じ、 MSL10とGLR3の特性がその速度差を規定していること、さらにGLR3が未解明の電位依存的な活性制御機構を有する可能性を示唆した。

13:55-14:35 アナロジーでみる生命現象とメカニクス

  • 和田 浩史(立命館大学)
  • 要旨:生物の著しい特徴のひとつは、そのサイズ、かたち、うごきの際立った多様性です。とくに、植物は成長とともに次々とその形を変えていきますが、全体としての調和を見出すこともできます。このような形の理由は、多くの場合、その機能性と深く結びついています。これは、優れた工業デザインが理にかなった機能美を持ち合わせていることと同じ事情といえます。むしろ、進化の結果である生物の形から、役立つ工業デザインのインスピレーションを得ることのほうが普通です。しかし、実際には、「形態はつねに機能にしたがう」というわけでもありません。とくに、生物においては、かたちと力の関係がその機能を 決めるように思います。発表では、生物の問題に着想をえた力学の研究について、時間の許す限り、いくつかご紹介します。そこから横滑りして、もっと単純な物理系、たとえば、昔のおもちゃ、折り紙や切り紙、あるいはシュレッダーしたただの紙屑の束、のような「ほとんどどうでもいいような対象」についても深く考えてみたいと思います。たぶん、まとまりのない話になるだろうと思います。翻って、それらの雑多な考察が、もしかしたら、なにかの生命現象の理解に役立つかもしれない、などと考えるきっかけになれば幸いです。

14:35-15:15 飛行植物の拡散ストラテジー:形態機能解析で未来の植物分布や発生を予測する

  • 中山 尚美(沖縄科学技術大学院大学)
  • 要旨:生物の組織や器官は「どうやって」作られるのだろう、は、発生生物学の問いである。生物の組織や器官は「どうして」現状の作りをしているのだろう、という問いは、生物メカニクスを発生生物学と合わせた視点から答えることができる。私たちの研究室では、植物の形の「どうして」を、環境変化にともなう変形(モーフィング)を解析することで研究している。定量化は、我々の研究の根底にある課題で、どういう実験ができるのか(ウェット、ドライ両方で)、どんな問いを考えていけるのか、は、何を計測できるのか、に依存することが多々ある。タンポポの種の空中飛行は、パパスpappus(またはプルームplume)という100ほどの細長い毛でできた構造体が、空気抵抗を増やすことで促されている。パパスは乾燥した環境下ではほぼ水平に開いているが、湿度が飽和すると水分の吸収に伴い、垂直に向きを変えて形を変える。それにより、落下速度は上がるが、親植物からの離脱率は下がる。親植物からの離脱がとても強い風でのみ起こるため、落下速度が速くても、遠くまで拡散できることが、現実的な風の動きをシミュレーションした種子飛行モデルから示された。このように、環境による形態変化とそれにともなう構造体機能のシフトを観ることで、さまざまな環境下でどのような形態がフィットネスを上げる可能性があるのかを示唆することができる。この会では、これらのタンポポ・プロジェクトを、我々が経験した定量化チャレンジに重点を置いて話していきたい。

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