2022 10thqbio session3
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=セッション3「細胞スケールの形態制御」(12/16 9:30 - 11:40)=
==細胞内反応拡散波の人工細胞再構成系で探る細胞空間の時空間パターン形成原理==
- 藤原慶(慶大)
- 要旨:化学反応と分子拡散の共役(反応拡散共役)によって形成される時空間パターンは、動物の縞模様のように細胞間相互作用で出現する現象を説明可能だが、最新研究において細胞内の分子配置にも重要である証拠が集まってきている。しかし、反応拡散共役によるパターン形成はその振る舞いそのものが非線形科学に属するように複雑であり、物質が混在する細胞内を解析するだけではその全容の解明は困難である。さらに、細胞内のようなマイクロメーターサイズの空間では、マクロな統計的性質が成り立たないメゾスコピックな多体系であると同時に、閉鎖系にも関わらず分子反応を利用して非平衡開放系のような振る舞いを示すという、細胞空間と呼ぶべき特殊性があることも理解の障壁となっている。
本発表では、バクテリア細胞分裂面決定系(Minシステム)を構成する反応拡散波(Min波)の人工細胞内再構成系を利用し、細胞空間における反応拡散共役によって細胞内の時空間パターンがどのように形成されるのか、その原理に迫ろうとした研究について発表する。具体的には、細胞空間は内部の生体分子に何をしているのか、細胞空間で創発される時空間パターンの特徴は何か、細胞空間でのパターン形成機構は制御できるのか、について述べる。また、得られた成果がMin波に限らず、反応拡散共役におけるパターン形成に普遍的な現象か、に関しても議論したい。
- 参考文献
- [1] S Takada, N Yoshinaga*, N Doi, K Fujiwara*. “Mode selection mechanism in traveling and standing waves revealed by Min wave reconstituted in artificial cells”, Science Advances, 8, eabm8460 (2022)
- [2] S Kohyama, N Yoshinaga*, M Yanagisawa, K Fujiwara*, N Doi. “Cell-sized confinement controls generation and stability of a protein wave for spatiotemporal regulation in cells”, eLife, 8, e44591 (2019)
- [3] A Yoshida, S Kohyama, K Fujiwara*, S Nishikawa, N Doi. “Regulation of spatiotemporal patterning in artificial cells by a defined protein expression system”, Chemical Science, 10, pp. 11064-11072 (2019)
==高分子混雑と膜物性が導く細胞サイズ効果==
- 渡邊千穂(広大)
- 要旨:細胞サイズの空間閉じ込めが内部溶液の挙動にどのような影響を与えるのかに興味が持たれている。私たちは、実際の細胞の特徴の特徴である、高分子混雑と脂質膜によるミクロサイズの閉じ込めが実現できる高分子液滴(w/oエマルジョン)を人工細胞として用い、細胞サイズ効果の読み解きを試みた。具体的には、溶液特性の基礎となる分子拡散と、近年注目されている液体液体相分離(LLPS)に対する細胞サイズ効果を実験から調査した研究を紹介する。これら物理化学的な視点から、細胞サイズの持つ意味を考えたい。
なお本研究は、柳澤実穂氏(東京大学)との共同研究である。
- 参考文献
- [Review]
https://doi.org/10.1021/acs.langmuir.2c01397
- [Papers]
https://doi.org/10.1021/acsmaterialslett.2c00404 https://doi.org/10.1021/acs.langmuir.0c03086 https://doi.org/10.1021/acs.jpcb.9b10558
==蛍光単分子イメージングで明らかにする流動力伝達の仕組み==
- 山城佐和子(京大)
- 生体において、方向性を持った流動は、細胞の内(細胞骨格に起因する細胞内流動)と外(血流など)に存在し、それぞれ重要な役割を担う。流動は、極性を持った「力」を伴う点で興味深いが、細胞内外の流動力の伝達機構は未だ不明な点が多く残っている。細胞内で蛍光1分子を直接可視化する蛍光単分子スペックル顕微鏡法は、流れに伴う分子の動態変化を捉える最も精度の高い実験法の一つである。本講演では、(1)細胞周縁のアクチン線維ネットワークで起こる細胞内流動(レトログレードアクチンフロー)の力が、どのように細胞外に伝わるか、接着斑分子タリンの高精度分子可視化解析により明らかになって来た知見を報告する。また、われわれが最近見出した(2)細胞外流に起因する細胞膜分子の勾配形成現象を紹介する。細胞内1分子可視化によって初めてわかってきた新しい力伝達の仕組みについて議論したい。
- 参考文献