年会2010セッション1

From Japanese society for quantitative biology

第二回年会 (セッション1)定量生物学の要素技術

日時

20010/01/10 10:30-12:00 セッション1

Chair

概要

プログラム

(発表順、敬称略)

自己組織的パターン形成過程を定量解析するためのプローブ開発とその応用

  • 堀川一樹(北海道大学 電子研、JSTさきがけ「生命システム」領域)

動的な生命現象を定量解析するには計測技術が必須である。細胞や組織の形態のように単純に画像取得するだけで十分な場合もあれば、化学信号のように何らかの手法を用いて細胞の内部状態を非侵襲的に可視化する必要が生じる場合もある。本発表では、最大10万個の細胞集団が行う自己組織的パターン形成過程において自発的に生じる細胞間化学信号伝播パターンを可視化するためのFRETプローブ開発およびそのアプリケーション例を紹介する。特に実験家の視点から、興味ある現象をライブイメージングしようとする際に、生じうる技術的問題点と解決の方法をDO IT YOURSELFをキーワードに議論したい。

視床下部神経活動の光操作による本能行動発現制御

  • 山中 章弘(自然科学研究機構 生理学研究所 細胞生理研究部門 准教授、JST 戦略的創造研究 さきがけ 脳神経回路の形成・動作と制御)

視床下部は摂食行動、性行動、睡眠覚醒などの本能行動の中枢である。本能行動は個体の生存や生物種の維持に極めて重要な機能であるが、それを調節する神経機構については未だに十分解明されていない。視床下部にはペプチドを神経伝達物質として含有する神経が多く存在し、その神経ペプチドが本能機能発現の本態と考えられている。このことは、神経ペプチド遺伝子の発現調節領域(プロモーター)を用いると、特定神経へ外来遺伝子発現を誘導できることを示唆している。これまでに、緑色蛍光タンパク質、カルシウム感受性タンパク質などを特定の神経に発現する遺伝子改変マウスを作成し、電気生理学的解析やカルシウムイメージングを用いて、本能行動調節に関わる神経回路網について明らかにしてきた。しかしながら、本能行動は個体でのみ生じる現象のため、その回路機能の動作原理解明には個体を用いた検証が不可欠である。
そこで、光によって神経活動操作を可能にする分子(光活性化タンパク質)をペプチド作動性神経に発現させた遺伝子改変マウスを作成し、個体レベルで神経活動の操作を行い、その結果惹起される行動を解析することによって、その神経回路が担っている生理機能の解明を試みる。
ここでは、睡眠覚醒調節に重要な役割を担っている神経ペプチド「オレキシン」を産生する視床下部のオレキシン神経細胞に光活性化タンパク質を発現させた研究を紹介する。オレキシン神経特異的に光活性化タンパク質を発現する遺伝子改変マウスを作成し、その活動を光によって制御したときの睡眠覚醒状態変化を解析し、睡眠覚醒調節におけるオレキシン神経の役割について明らかにする。


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