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− | * 氏名 | + | * 氏名 中村 哲也 |
− | * 所属 | + | * 所属 大阪大学 生命機能研究科 発生遺伝学グループ (濱田研究室) |
* 専門 発生生物学 | * 専門 発生生物学 |
Revision as of 08:44, 2 October 2008
会議趣旨
第二回「定量生物学の会(仮)」会議参加者の皆様
本日第二回「定量生物学の会(仮)」を神戸理化学研究所発生・再生総合科学研究センターにて、クローズドミーティングとして開催させていただきます。皆様には,お忙しい中参加をお引きうけいただき,誠にありがとうございます。
現在分子生物学・発生生物学・生物物理学・そして数理生物学など生命科学研究を担う多数の領域において、「定量的な方法論で生命現象を明らかにしてゆく」という活動が今後の各領域を担う大きな方向性として同時多発的・相互依存的に浮上しつつあると思います。
この会合はこのような背景を受け、各領域において自ら手を動かして定量的な方向性を模索している若手研究者を集めて、今後の定量的な生命科学の方向性、未来、意義、問題点などをブレインストーミング的に議論し、領域横断的な方向性や連携関係をトップダウン的にではなくボトムアップ的に模索できないか、という目的でスタートし、幸い、様々な関係者のご協力のもと、今回の開催が可能になりました。
今回はなるべく領域横断的な議論が可能になるように、参加者の人数を限ったクローズドミーティングとし、発生生物・細胞生物・分子生物・生物物理・1分子生物・数理生物・バイオインフォマティクス・バイオイメージング・生命工学などの、各分野を牽引してゆくポテンシャルと熱意を秘めていると思われる関東近辺の若手研究者に、分野の偏りがなるべく少なくなるように声をかけさせていただきました。
現在定量的な方向性は様々な領域で、特に志のある若手によって研究が進められていると思いますが、おそらくほとんどの領域内でそのような試みはいまだマイノリティーであり、自分たちが所属している領域内の既存の会議だけでは具体的な情報交換だけでなく定量的な研究を行っている研究者間での密な議論すらも、不足している、というのが現状ではないかと思います。
このような状況に対し、今後の定量的な生命科学の方向性や解決すべき問題点について、おそらく参加者の皆様それぞれが、具体的な意見をお持ちであると推察します。本研究会はそのような現状を踏まえ、若手研究者が情報を交換したり、外部へ情報を発信したり、そして生命科学の各領域をまたいだ今後の定量的な生命科学の方向性などの個々では解決できない問題を議論し、そして主体的に解決してゆく一つのきっかけになればよいと思っています。
ですので、あくまで今回の会は、皆さんが集まる機会、そして考え議論するためのたたき台として位置づけられていると、世話人一同考えております。今回参加していただく発表者・参加者間での自発的かつ積極的な議論の中で、参加する人それぞれに意味がある会の方向性、そして定量的な生命科学の可能性というのが見えてくれば良い、と考えております。そのために、発表者による発表後、参加者全員での総合討論の時間を長めにとらせていただきました。
ぜひ発表者だけでなく、参加者の方々も積極的に参加していただき、有意義な時間を共有できたらと思っております。
世話人:黒澤元、小林徹也、杉村薫、舟橋啓、前多裕介
日程・会場・発表形式
- 会議日程: 平成20年3月28日(金)10:30 ~ 18:30
- 会議会場: 神戸理化学研究所発生・再生総合科学研究センター(CDB)
- 発表形式:講演時間は1人 15~20分、質疑応答を含めて25分以内でお願いいたします。
スケジュール
- 趣旨説明:杉村薫、黒澤元、舟橋啓(10:30~10:40)
- 午前中の講演(10:40~11:55)
- 大阪大学 中村哲也(発生生物学)
- 京都大学 藤森俊彦(発生生物学)
- 理研 鈴木誉保(進化形態学・複雑系生物学)
- 昼食 & 発表者・参加者の自己紹介(11:55~13:00)
- 午後の講演Ⅰ(13:00~14:15)
- 福井大学 原田崇広(生物物理・細胞生物学)
- 京都大学 笠井倫志(1分子生物学)
- EMBL-EBI 広井賀子(システムバイオロジー、生化学・分子生物学)
- 休憩
- 午後の講演Ⅱ(14:30~16:10)
- 奈良医科大学 高木拓明(生物物理学)
- 大阪大学 佐藤雅之(細胞生物学・生物物理学)
- 奈良先端 塚田祐基(画像解析・数理生物学)
- 京都大学 青木一洋(細胞生物学・バイオイメージング)
- 休憩
- 全体討論(16:30~18:30)
参加者名簿
敬称略/アイウエオ順
- 青木一洋(京都大学)
- 荒田幸信(理研・CDB)
- 笠井倫志(京都大学)
- 黒澤元(東京大学・ERATO 複雑数理プロジェクト)
- 小林妙子(京都大学・影山研)
- 小林徹也(理研・CDB/学振)
- 佐藤雅之(大阪大学)
- 杉村薫(理研・和光・宮脇研)
- 鈴木誉保(理研・CDB)
- 高木拓明(奈良医科大学)
- 塚田祐基(奈良先端)
- 中村哲也(大阪大学)
- 二階堂愛(理研・CDB)
- 原田崇広(福井大学)
- 広井賀子 (EMBL-EBI)
- 藤森俊彦(京都大学)
- 舟橋啓 (慶應義塾大学)
- 前多裕介(東京大学・佐野研)
全体討論のたたき台
- 定量的な生物学におけるBiological Question
- どんな問題に定量的アプローチが不可欠か?逆に定量では解けない問題はなにか?(分子生物学の範疇の問題は何か?)
- そのような問題はどれくらいあるのか?
- 旧来のバイオロジー・バイオロジストもそれを共有できるのか?
- 定量的な生命科学があつかう問題は、物理的・数理的な素養が無いと面白いとは思わないのか?
- 定量的なアプローチや技術
- 必要としている人、期待している人はどれくらいいるか?
- どうしたらそういう人たちを動かせるのか?
- 今定量的な方法論のコアになりつつある技術は?
- 今はないけれど必要な技術は?
- 定量に関わる人々・連携体制
- 各領域どれくらいの人が定量的な方向性に実際すでに関わっているのか?その割合は
- 各領域どれくらいの人が定量的な方向性に期待を持っているのか?その割合は
- すでに関わっている人々はどうやって目の前の定量特有の問題を解決しているのか?
- 定量的な方向性は1つの研究室だけで解決できるのか?
- 領域間の連携は必要か?具体的にどういった連携が必要か?
- どうやって領域間の相互理解を深めてゆくか?
- そのための具体的な仕掛けはなにか?
- 会について
- 会について何を求めるのか?
- 会に何ができるか?
- 具体的に会をとおして行いたいことは無いか?(研究会企画など)
- 会の名称は会を表すのに適切か?
- そのほか積極的に議題を募集します
発表要旨
1:左右決定機構とそのrobustness
- 発哺乳動物の体は外見からは左右対称に見えるが、その内部構造は左右非対称である。例えば、心臓は体の頭尾軸から左に傾いており、肺、肝臓は左右でその分葉数が異なっている。マウスでは左右軸形成は初期体節期に行われる事がわかっており、その分子メカニズムも詳細に解析されている。マウス胚における左右非対称性は最初にノードに見られる。ノード腹側層の個々の細胞が持つ1本の繊毛が、全て時計方向に回転運動をすることでノード内部に右から左への水流が生じるのである。同時期に、ノードの左右両脇では分泌因子でありTransforming Growth Factor(TGF-β) スーパーファミリーに属するNodalが左右非対称に発現する。その後、左側板中胚葉ではNodalの発現が開始し,Lefty2(Nodalと同様TGF-βスーパーファミリーに属し、Nodalシグナルのインヒビター)も同部位で発現する。私達は現在までに、実験と数理モデルを用いた解析から、ノード脇における僅かな左右差をSelf-Enhancement and Lateral-Inhibitionsystemが大きく増幅し、左側板中胚葉のみで安定にNodalとLeftyの発現が起こるという結論を得た。(T.Nakamura et al. Dev.Cell 2006) しかしながら詳細に観察を進めると、ノード脇における左右非対称な遺伝子発現量は個体間によっておおきくばらつく事がわかってきた。左側板中胚葉におけるNodalの発現は、全ての個体で3体節期で始まり右側にその発現が確立しない事から、ノード脇におけるNodal等の遺伝子発現量のぶれは何らかの機構で厳密に制御されていると考えられる。上記の理由から、定量的手法を用いて左右軸形成における遺伝子発現量の制御またシグナル量の制御の解析を進めているところである。
- 氏名 中村 哲也
- 所属 大阪大学 生命機能研究科 発生遺伝学グループ (濱田研究室)
- 専門 発生生物学