Difference between revisions of "第七回年会一日目2"
From Japanese society for quantitative biology
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==線虫中枢神経系のまるごと計測および定量解析に向けた取り組み(Towards measurement and analysis of whole-brain activity in ''C. elegans'')== | ==線虫中枢神経系のまるごと計測および定量解析に向けた取り組み(Towards measurement and analysis of whole-brain activity in ''C. elegans'')== | ||
*講演者:寺本孝行(九州大学)、吉田亮(統計数理研究所)(ペアプレゼン) | *講演者:寺本孝行(九州大学)、吉田亮(統計数理研究所)(ペアプレゼン) | ||
− | *要旨:脳(中枢神経系)は、記憶や学習、行動の制御など、ヒトを含め動物個体の生存にとって重要な機能をもつ。しかしながら、そのメカニズムについては未だ不明な点が多い。かりに全ての中枢神経の活動を個々のニューロンレベルで計測・解析ができれば、脳機能を解明するうえで有用な情報を獲得できる。私たちは、この目標を実現するために、コンパクトな脳を持つ線虫C. | + | *要旨:脳(中枢神経系)は、記憶や学習、行動の制御など、ヒトを含め動物個体の生存にとって重要な機能をもつ。しかしながら、そのメカニズムについては未だ不明な点が多い。かりに全ての中枢神経の活動を個々のニューロンレベルで計測・解析ができれば、脳機能を解明するうえで有用な情報を獲得できる。私たちは、この目標を実現するために、コンパクトな脳を持つ線虫C. elegansをモデルシステムとして、最新の光学技術とデータサイエンスを融合させた計測技術の開発と研究を進めている。これまでに、生きた線虫の全中枢神経系の立体Ca2+イメージングを可能にする4-Dイメージングシステムとニューロンの活動状態を定量化するための画像解析パイプラインを開発してきた。パイプラインは、画像中の細胞位置の自動検出、イメージレジストレーション、細胞トラッキングアルゴリズムから構成される。細胞検出では、カーネル密度推定とRPHC法という独自の最適化法を組み合わせ、解析手法の設計を行った。トラッキングでは、マルコフ確率場で細胞位置の時空間変化をモデリングし、トラッカーの置換や併合を回避しながら、数百の細胞集団の動きを追跡することに成功した。さらに、これらの技術を用いて、無刺激条件において複数のニューロンが周期的に同期した活動をしていること、また匂い刺激に応答する複数のニューロンが存在することを明らかにしてきた。 |
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現在は、可視化された神経回路の情報処理のプロセスと電子顕微鏡で明らかにされている線虫のシナプス結合の情報と組み合わせながら、神経回路のシミュレーションモデルの開発を目指している。ここで、異なる個体および実験条件から得られたデータを比較・解析するために、高精度なイメージレジストレーションアルゴリズムが必須となるが、これについても独自手法の開発を進めている。さらに、ベイズ統計のアイデアにもとづきシミュレーションとイメージングデータを組み合わせることで、神経系全体の内部状態を統計的に推定する研究を展開したいと考えている。 | 現在は、可視化された神経回路の情報処理のプロセスと電子顕微鏡で明らかにされている線虫のシナプス結合の情報と組み合わせながら、神経回路のシミュレーションモデルの開発を目指している。ここで、異なる個体および実験条件から得られたデータを比較・解析するために、高精度なイメージレジストレーションアルゴリズムが必須となるが、これについても独自手法の開発を進めている。さらに、ベイズ統計のアイデアにもとづきシミュレーションとイメージングデータを組み合わせることで、神経系全体の内部状態を統計的に推定する研究を展開したいと考えている。 | ||
本プロジェクトのメンバーは、実験とモデリング、統計科学の専門家から構成されている。講演では、これら三つの要素を組み合わせることの重要性ならびに独自のモチベーションを持ちプロジェクトに参画する異分野の研究者が集まることで何を生み出せるのかを議論したい。 | 本プロジェクトのメンバーは、実験とモデリング、統計科学の専門家から構成されている。講演では、これら三つの要素を組み合わせることの重要性ならびに独自のモチベーションを持ちプロジェクトに参画する異分野の研究者が集まることで何を生み出せるのかを議論したい。 |
Revision as of 01:09, 29 September 2014
情報の定量生物学 15:30-17:30
タイトルTBA
- 講演者:岩崎渉(東京大学)
線虫中枢神経系のまるごと計測および定量解析に向けた取り組み(Towards measurement and analysis of whole-brain activity in C. elegans)
- 講演者:寺本孝行(九州大学)、吉田亮(統計数理研究所)(ペアプレゼン)
- 要旨:脳(中枢神経系)は、記憶や学習、行動の制御など、ヒトを含め動物個体の生存にとって重要な機能をもつ。しかしながら、そのメカニズムについては未だ不明な点が多い。かりに全ての中枢神経の活動を個々のニューロンレベルで計測・解析ができれば、脳機能を解明するうえで有用な情報を獲得できる。私たちは、この目標を実現するために、コンパクトな脳を持つ線虫C. elegansをモデルシステムとして、最新の光学技術とデータサイエンスを融合させた計測技術の開発と研究を進めている。これまでに、生きた線虫の全中枢神経系の立体Ca2+イメージングを可能にする4-Dイメージングシステムとニューロンの活動状態を定量化するための画像解析パイプラインを開発してきた。パイプラインは、画像中の細胞位置の自動検出、イメージレジストレーション、細胞トラッキングアルゴリズムから構成される。細胞検出では、カーネル密度推定とRPHC法という独自の最適化法を組み合わせ、解析手法の設計を行った。トラッキングでは、マルコフ確率場で細胞位置の時空間変化をモデリングし、トラッカーの置換や併合を回避しながら、数百の細胞集団の動きを追跡することに成功した。さらに、これらの技術を用いて、無刺激条件において複数のニューロンが周期的に同期した活動をしていること、また匂い刺激に応答する複数のニューロンが存在することを明らかにしてきた。
現在は、可視化された神経回路の情報処理のプロセスと電子顕微鏡で明らかにされている線虫のシナプス結合の情報と組み合わせながら、神経回路のシミュレーションモデルの開発を目指している。ここで、異なる個体および実験条件から得られたデータを比較・解析するために、高精度なイメージレジストレーションアルゴリズムが必須となるが、これについても独自手法の開発を進めている。さらに、ベイズ統計のアイデアにもとづきシミュレーションとイメージングデータを組み合わせることで、神経系全体の内部状態を統計的に推定する研究を展開したいと考えている。 本プロジェクトのメンバーは、実験とモデリング、統計科学の専門家から構成されている。講演では、これら三つの要素を組み合わせることの重要性ならびに独自のモチベーションを持ちプロジェクトに参画する異分野の研究者が集まることで何を生み出せるのかを議論したい。
- 参考文献:
T. Tokunaga, O. Hirose, S. Kawaguchi, Y. Toyoshima, T. Teramoto, H. Ikebata, S. Kuge, T. Ishihara, Y. Iino, R. Yoshida (2014) Automated detection and tracking of many cells by using 4D live-cell imaging data, Bioinformatics, 30(12):i43-i51.
タイトルTBA
- 講演者:伊藤創祐(東京大学)