Difference between revisions of "2022 10thqbio tutorial"
From Japanese society for quantitative biology
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− | ''' | + | '''大腸菌のシグナリング動態を視る技術''' |
*神野圭太(中央研究院) | *神野圭太(中央研究院) | ||
*要旨:細胞は一種の情報処理機関として見ることができます。私は大腸菌の走化性シグナリングをモデル系としてその性質を調べてきました。今回のチュートリアルでは、私が開発に深く関わってきた「大腸菌の走化性シグナリング動態を一細胞レベルで測定する実験系」を概説します。特に(i)マイクロ流体デバイスによる入力刺激の制御系、(ii)蛍光(FRET)による分子間相互作用の可視(光子)化、(iii)光子の数の時系列から分子間相互作用動態を推定する逆問題を解く機械学習技術、の三つを中心に解説する予定です。 | *要旨:細胞は一種の情報処理機関として見ることができます。私は大腸菌の走化性シグナリングをモデル系としてその性質を調べてきました。今回のチュートリアルでは、私が開発に深く関わってきた「大腸菌の走化性シグナリング動態を一細胞レベルで測定する実験系」を概説します。特に(i)マイクロ流体デバイスによる入力刺激の制御系、(ii)蛍光(FRET)による分子間相互作用の可視(光子)化、(iii)光子の数の時系列から分子間相互作用動態を推定する逆問題を解く機械学習技術、の三つを中心に解説する予定です。 | ||
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− | ''' | + | '''環境DNAモニタリング技術の開発と応用: サンプリング・ラボ実験から配列解析・統計解析まで''' |
*潮雅之(香港科技大学) | *潮雅之(香港科技大学) | ||
*要旨:生物群集のモニタリングは、生態系の状態を把握する上で最も基本的な調査の一つである。しかしながら、これまで野外における生物群集のモニタリングは、非常に労力的・金銭的・時間的なコストが大きかった。近年、環境サンプル中に含まれる生物由来のDNA (環境DNA) を分析する技術が飛躍的に発展し、環境DNA分析に基づいた迅速・簡便・網羅的な生物群集モニタリングが可能になりつつある。本講演では、環境DNA分析技術に関連して、野外でのサンプリング方法・サンプルからのDNA抽出やシーケンスの方法・得られたデータの解析方法について解説する。特に、現場での作業労力が比較的小さい環境DNA分析法は、多地点・高頻度の生物群集のモニタリングに向いており、そのようなモニタリングから得られた「環境DNA時系列データ」の解析方法やその有用性について解説したい。 | *要旨:生物群集のモニタリングは、生態系の状態を把握する上で最も基本的な調査の一つである。しかしながら、これまで野外における生物群集のモニタリングは、非常に労力的・金銭的・時間的なコストが大きかった。近年、環境サンプル中に含まれる生物由来のDNA (環境DNA) を分析する技術が飛躍的に発展し、環境DNA分析に基づいた迅速・簡便・網羅的な生物群集モニタリングが可能になりつつある。本講演では、環境DNA分析技術に関連して、野外でのサンプリング方法・サンプルからのDNA抽出やシーケンスの方法・得られたデータの解析方法について解説する。特に、現場での作業労力が比較的小さい環境DNA分析法は、多地点・高頻度の生物群集のモニタリングに向いており、そのようなモニタリングから得られた「環境DNA時系列データ」の解析方法やその有用性について解説したい。 | ||
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− | ''' | + | '''離散的配列情報と高次元生命情報をつなぐ統計と機械学習''' |
*河口理紗(京大) | *河口理紗(京大) | ||
*要旨:生物を形作る塩基配列は離散的な情報であり、そこからどのように確率的かつ連続的なバリエーションを持つ細胞集団(個体)の形成を可能にしているのか、その複雑なメカニズムの解明は未だ道半ばである。本チュートリアルでは、近年計測が可能になった様々な一細胞レベルの高次元生命情報と、それを生み出す配列情報とをつなぎあわせるための統計や機械学習手法を紹介する。深層学習の応用の爆発的広がりにより新たなパラダイムを迎えたバイオインフォマティクス分野において、データの特性の理解とヘテロジーニアスなデータセットを収集・比較するメタ解析的アプローチの重要性についても紹介したい。 | *要旨:生物を形作る塩基配列は離散的な情報であり、そこからどのように確率的かつ連続的なバリエーションを持つ細胞集団(個体)の形成を可能にしているのか、その複雑なメカニズムの解明は未だ道半ばである。本チュートリアルでは、近年計測が可能になった様々な一細胞レベルの高次元生命情報と、それを生み出す配列情報とをつなぎあわせるための統計や機械学習手法を紹介する。深層学習の応用の爆発的広がりにより新たなパラダイムを迎えたバイオインフォマティクス分野において、データの特性の理解とヘテロジーニアスなデータセットを収集・比較するメタ解析的アプローチの重要性についても紹介したい。 |
Latest revision as of 15:27, 24 October 2022
チュートリアル(12/7 10:30-12:00, 13:30-15:00, 15:30-17:00)
大腸菌のシグナリング動態を視る技術
- 神野圭太(中央研究院)
- 要旨:細胞は一種の情報処理機関として見ることができます。私は大腸菌の走化性シグナリングをモデル系としてその性質を調べてきました。今回のチュートリアルでは、私が開発に深く関わってきた「大腸菌の走化性シグナリング動態を一細胞レベルで測定する実験系」を概説します。特に(i)マイクロ流体デバイスによる入力刺激の制御系、(ii)蛍光(FRET)による分子間相互作用の可視(光子)化、(iii)光子の数の時系列から分子間相互作用動態を推定する逆問題を解く機械学習技術、の三つを中心に解説する予定です。
- 参考文献
- [1] Kamino*, K., Kadakia, N., Aoki, K., Shimizu, T. S., & Emonet*, T. (2022). Optimal inference of molecular interactions in live FRET imaging. bioRxiv. Under review in PNAS (*Corresponding authors)
- [2] Mattingly*, H. H., Kamino*, K., Machta, B. B., & Emonet, T. (2021). Escherichia coli chemotaxis is information limited. Nature Physics, 17(12), 1426-1431. (*Equal contribution)
- [3] Moore, J. P., Kamino, K., & Emonet, T. (2021). Non-genetic diversity in chemosensing and chemotactic behavior. Int. J. Mol. Sci., 22(13), 6960.
- [4] Kamino*, K., Keegstra, J. M., Long, J., Emonet, T., & Shimizu, T. S. (2020). Adaptive tuning of cell sensory diversity without changes in gene expression. Science advances, 6(46), eabc1087.
- [5] Keegstra, J. M., Kamino, K., Anquez, F., Lazova, M. D., Emonet, T., & Shimizu, T. S. (2017). Phenotypic diversity and temporal variability in a bacterial signaling network revealed by single-cell FRET. Elife, 6, e27455.
環境DNAモニタリング技術の開発と応用: サンプリング・ラボ実験から配列解析・統計解析まで
- 潮雅之(香港科技大学)
- 要旨:生物群集のモニタリングは、生態系の状態を把握する上で最も基本的な調査の一つである。しかしながら、これまで野外における生物群集のモニタリングは、非常に労力的・金銭的・時間的なコストが大きかった。近年、環境サンプル中に含まれる生物由来のDNA (環境DNA) を分析する技術が飛躍的に発展し、環境DNA分析に基づいた迅速・簡便・網羅的な生物群集モニタリングが可能になりつつある。本講演では、環境DNA分析技術に関連して、野外でのサンプリング方法・サンプルからのDNA抽出やシーケンスの方法・得られたデータの解析方法について解説する。特に、現場での作業労力が比較的小さい環境DNA分析法は、多地点・高頻度の生物群集のモニタリングに向いており、そのようなモニタリングから得られた「環境DNA時系列データ」の解析方法やその有用性について解説したい。
- 参考文献
- Chang et al. (2017) Ecological Research, doi:10.1007/s11284-017-1469-9
- Miya (2022) Annual Review of Marine Science, doi: 10.1146/annurev-marine-041421-082251
- Ushio (2022) Proceedings of the Royal Society B, doi: 10.1098/rspb.2021.2690
離散的配列情報と高次元生命情報をつなぐ統計と機械学習
- 河口理紗(京大)
- 要旨:生物を形作る塩基配列は離散的な情報であり、そこからどのように確率的かつ連続的なバリエーションを持つ細胞集団(個体)の形成を可能にしているのか、その複雑なメカニズムの解明は未だ道半ばである。本チュートリアルでは、近年計測が可能になった様々な一細胞レベルの高次元生命情報と、それを生み出す配列情報とをつなぎあわせるための統計や機械学習手法を紹介する。深層学習の応用の爆発的広がりにより新たなパラダイムを迎えたバイオインフォマティクス分野において、データの特性の理解とヘテロジーニアスなデータセットを収集・比較するメタ解析的アプローチの重要性についても紹介したい。
- 参考文献
- Probabilistic Machine Learning: An Introduction (Adaptive Computation and Machine Learning series) by Kevin P. Murphy
- https://mit6874.github.io/