Difference between revisions of "About us"
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「定量生物学の会」はこのような背景のもと、各領域において自ら手を動かして定量的な生命科学を模索している若手研究者により2回の準備会を経て立ち上げられた研究グループです。 | 「定量生物学の会」はこのような背景のもと、各領域において自ら手を動かして定量的な生命科学を模索している若手研究者により2回の準備会を経て立ち上げられた研究グループです。 | ||
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=== 会の目的 === | === 会の目的 === | ||
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+ | 1つ目は「'''年会'''」と呼ばれる会です。定量的な生命科学研究に携わる・もしくは携わりたいと考えている研究者どうしが集まって相互に情報を発信することで、技術的な問題の解決方法や今後の研究の方向性などを模索することを目指します。 | ||
− | + | 2つ目は「'''キャラバン'''」と呼ばれる会です。(主に)定量生物学に携わっていないが興味を抱いている研究者に向けて、定量的な生命科学研究の重要性や成果を発信する会です。2009年に初回のキャラバンを「遺伝研」で開催しました。2019年には第二回キャラバンを北海道大学で開催しました。今後も、様々な研究機関で開催したいと考えています。 | |
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=== コアメンバー・世話人=== | === コアメンバー・世話人=== | ||
*[[コアメンバー世話人一覧|コアメンバー・世話人の一覧]] | *[[コアメンバー世話人一覧|コアメンバー・世話人の一覧]] | ||
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=== 研究会のウェブサイト === | === 研究会のウェブサイト === | ||
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− | == | + | == 私達が考える定量生物学 2008 == |
− | + | 定量的なデータ解析は生命科学の様々な分野において行われており、すべてを本研究会で網羅することは現実的でないと考えています。そこで、あくまで本研究会が対象に設定している定量生物学であることを明示するために、「我々が考える定量生物学」というタイトルにしました。また、「我々が考える定量生物学」も未成熟であり、今後色々な人と議論を交わす過程で変わっていくと思います。変わっていく過程、外部からの意見を取り入れる姿勢を示すという意味で、各年度ごとに定義を更新していくのもおもしろいかと考えました。そのため2008という日付を入れてあります。 | |
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− | + | 定量的な生命科学が注目されてきている背景として、イメージングなどの光学技術、MEMSなどの工学技術の発展に伴い、より解像度の高い時空間情報を得られるようになったことが挙げられます。また、実験・解析技術の異分野間交流が進み、それにともなって優れた定量解析から生命システムの原理に迫る研究が分野を超えて認識されるようになってきたことも背景の一つに挙げられます。 | |
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+ | 例えば主に分子生物学的手法を用いてきた細胞生物学や発生生物学では、バイオイメージングなどの発展によりこれまで見過ごされてきた、あるいは解析できなかった分子レベル、細胞レベルの現象を詳細に可視化できるようになりました。それにともない、現象を定量的に解析すること、そしてそのための数理、実験手法の必要性が認識されるようになってきました。このような流れは、定量的な解析が分子生物学成立直後までは活発に行われていたことを考えると、ルネッサンス的な意味を持っていると考えられます。 | ||
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+ | 一方で生物物理学においては、バイオイメージングなどを駆使した定量的な解析は継続的に行われてきましたが、逆にスクリーニングなどの分子生物学的な研究はあまり集中的に行われてきませんでした。しかし最近、生物物理学の方法論と分子生物学の方法論の双方を使いこなす若手研究者が現れ、融合的な研究の機運が高まってきています。また、これまでタンパク質構造などの分子レベルの現象と比較して比重が低かった細胞レベルの現象や個体発生に挑む研究者も増加傾向にあり、細胞や組織のスケールにおける定量的な研究が顕在化してきているという背景もあります。 | ||
− | + | さらに、理論系研究においては、利用可能な定量的な実験データが限られていた時代の理論生物学のスタイルから脱却した、定量的な実験データの存在を前提とする現代的な理論生物学が求められています。またインフォマティクスでは、分子生物学の発展に立脚したオミクス情報を対象とした研究だけでなく、オミクス情報ほど網羅的ではないがより定量性の高いデータという新しい種類の情報を対象としたインフォマティクスの可能性を探る試みがなされてきています。 | |
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− | + | このように定量生物学は、生命科学の様々な分野における新しい流れが結びついた異分野融合の交差点に位置していると考えられます。そして「定量生物学の会」は、定量的な生命科学に挑戦する様々な分野の若手研究者が、その技術や知見を交換をする場としての役割を担っていきたいと考えています。しかし研究会としては、'''定量的な研究はあくまで手段であって、我々の最終的な目的はこれまで明らかにされていない生命現象の謎を解くことにある'''と考えています。 | |
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− | === | + | === 私達が現在想定している定量生物学の研究対象 === |
− | + | 定量的なデータ解析は生命科学の様々な分野において行われており、そのすべてを本研究会で網羅することは現実的でないと考えています。本研究会が現時点でターゲットとしている研究は、まず過去に定量的な方法論を使っていたにもかかわらず、分子生物学による定性分析の台頭によって、定量的な思考や方法論が衰退してしまった分野です。例えば発生学はこのような分野の1例であると考えられます。このような分野では定量的な思考や手法が遅れている分、それらを導入することにより生命現象の理解が格段に進む可能性があります。 | |
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− | + | 他方で、生物物理学における細胞ダイナミクスの解析など、定量的な解析手法の適用範囲を多階層のスケールを横断する形で拡張する境界領域分野も主要な対象とします。解析対象は分子から個体までを含みますが、特に細胞・組織の階層を含む研究を中心に据えます。分子、個体においては、それぞれ、より高次・低次の現象との関係を意識したものに積極的に取り組み、分子と分子内部分構造などは重点的には扱いません。 | |
− | + | さらに、理論系研究においてはアイディア・モデルのみに動機づけられた研究よりも、定量的なデータや知見を積極的に取り入れた理論を模索する研究を現時点では想定しています。また、画像データから定量性の高い時空間情報を抽出することが現在の定量生物学におけるデータ生産のボトルネックになっていることから、画像解析を中心としたインフォマティクスの研究も歓迎します。 | |
− | + | 神経科学は伝統的に定量性を意識した研究がなされてきた分野でありますが、すでに電気生理データなどの定量的な解析手法が比較的成熟しているため、現時点では対象に含めていません。ただし、神経科学と他分野を定量的な解析手法でつなぐ横断的研究(成長円錐の走性・神経細胞内の1分子計測・神経発生)などは対象に含めます。 | |
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Latest revision as of 08:46, 15 July 2023
定量生物学の会の概要
背景
現在、生命科学の多数の領域において、定量的なアプローチを導入した研究が分子生物学を補完する1つの方向性として浮上しつつあり、すでに萌芽的な研究例が報告されています。
「定量生物学の会」はこのような背景のもと、各領域において自ら手を動かして定量的な生命科学を模索している若手研究者により2回の準備会を経て立ち上げられた研究グループです。
Background of the foundation(English)
会の目的
本研究会は定量的な生命科学の方向性・問題点などを具体的に議論し、領域横断的な研究体制や連携関係をトップダウン的にではなく、最前線の研究を担う若手研究者(学生、PD、若手PI)によってボトムアップ的に模索することを目的としています。
The Aim of the Q-BioJP (English)
会の活動
メーリングリストによる情報交換(参加はコアメンバーによる紹介制)と、以下に述べます2つの目的の異なる研究会の開催を行っています。
1つ目は「年会」と呼ばれる会です。定量的な生命科学研究に携わる・もしくは携わりたいと考えている研究者どうしが集まって相互に情報を発信することで、技術的な問題の解決方法や今後の研究の方向性などを模索することを目指します。
2つ目は「キャラバン」と呼ばれる会です。(主に)定量生物学に携わっていないが興味を抱いている研究者に向けて、定量的な生命科学研究の重要性や成果を発信する会です。2009年に初回のキャラバンを「遺伝研」で開催しました。2019年には第二回キャラバンを北海道大学で開催しました。今後も、様々な研究機関で開催したいと考えています。
コアメンバー・世話人
研究会のウェブサイト
URL: https://q-bio.jp/
URL (English page): https://q-bio.jp/index.php?title=English
研究会の問い合わせ
連絡先:q.biology at gmail.com (迷惑メール対策のため@をatと表示しています。at を @ に置換してください)
私達が考える定量生物学 2008
定量的なデータ解析は生命科学の様々な分野において行われており、すべてを本研究会で網羅することは現実的でないと考えています。そこで、あくまで本研究会が対象に設定している定量生物学であることを明示するために、「我々が考える定量生物学」というタイトルにしました。また、「我々が考える定量生物学」も未成熟であり、今後色々な人と議論を交わす過程で変わっていくと思います。変わっていく過程、外部からの意見を取り入れる姿勢を示すという意味で、各年度ごとに定義を更新していくのもおもしろいかと考えました。そのため2008という日付を入れてあります。
なぜ定量生物学が再び注目されてきているのか?
定量的な生命科学が注目されてきている背景として、イメージングなどの光学技術、MEMSなどの工学技術の発展に伴い、より解像度の高い時空間情報を得られるようになったことが挙げられます。また、実験・解析技術の異分野間交流が進み、それにともなって優れた定量解析から生命システムの原理に迫る研究が分野を超えて認識されるようになってきたことも背景の一つに挙げられます。
例えば主に分子生物学的手法を用いてきた細胞生物学や発生生物学では、バイオイメージングなどの発展によりこれまで見過ごされてきた、あるいは解析できなかった分子レベル、細胞レベルの現象を詳細に可視化できるようになりました。それにともない、現象を定量的に解析すること、そしてそのための数理、実験手法の必要性が認識されるようになってきました。このような流れは、定量的な解析が分子生物学成立直後までは活発に行われていたことを考えると、ルネッサンス的な意味を持っていると考えられます。
一方で生物物理学においては、バイオイメージングなどを駆使した定量的な解析は継続的に行われてきましたが、逆にスクリーニングなどの分子生物学的な研究はあまり集中的に行われてきませんでした。しかし最近、生物物理学の方法論と分子生物学の方法論の双方を使いこなす若手研究者が現れ、融合的な研究の機運が高まってきています。また、これまでタンパク質構造などの分子レベルの現象と比較して比重が低かった細胞レベルの現象や個体発生に挑む研究者も増加傾向にあり、細胞や組織のスケールにおける定量的な研究が顕在化してきているという背景もあります。
さらに、理論系研究においては、利用可能な定量的な実験データが限られていた時代の理論生物学のスタイルから脱却した、定量的な実験データの存在を前提とする現代的な理論生物学が求められています。またインフォマティクスでは、分子生物学の発展に立脚したオミクス情報を対象とした研究だけでなく、オミクス情報ほど網羅的ではないがより定量性の高いデータという新しい種類の情報を対象としたインフォマティクスの可能性を探る試みがなされてきています。
このように定量生物学は、生命科学の様々な分野における新しい流れが結びついた異分野融合の交差点に位置していると考えられます。そして「定量生物学の会」は、定量的な生命科学に挑戦する様々な分野の若手研究者が、その技術や知見を交換をする場としての役割を担っていきたいと考えています。しかし研究会としては、定量的な研究はあくまで手段であって、我々の最終的な目的はこれまで明らかにされていない生命現象の謎を解くことにあると考えています。
Background of the foundation (English)
The Aim of the Q-BioJP (English)
私達が現在想定している定量生物学の研究対象
定量的なデータ解析は生命科学の様々な分野において行われており、そのすべてを本研究会で網羅することは現実的でないと考えています。本研究会が現時点でターゲットとしている研究は、まず過去に定量的な方法論を使っていたにもかかわらず、分子生物学による定性分析の台頭によって、定量的な思考や方法論が衰退してしまった分野です。例えば発生学はこのような分野の1例であると考えられます。このような分野では定量的な思考や手法が遅れている分、それらを導入することにより生命現象の理解が格段に進む可能性があります。
他方で、生物物理学における細胞ダイナミクスの解析など、定量的な解析手法の適用範囲を多階層のスケールを横断する形で拡張する境界領域分野も主要な対象とします。解析対象は分子から個体までを含みますが、特に細胞・組織の階層を含む研究を中心に据えます。分子、個体においては、それぞれ、より高次・低次の現象との関係を意識したものに積極的に取り組み、分子と分子内部分構造などは重点的には扱いません。
さらに、理論系研究においてはアイディア・モデルのみに動機づけられた研究よりも、定量的なデータや知見を積極的に取り入れた理論を模索する研究を現時点では想定しています。また、画像データから定量性の高い時空間情報を抽出することが現在の定量生物学におけるデータ生産のボトルネックになっていることから、画像解析を中心としたインフォマティクスの研究も歓迎します。
神経科学は伝統的に定量性を意識した研究がなされてきた分野でありますが、すでに電気生理データなどの定量的な解析手法が比較的成熟しているため、現時点では対象に含めていません。ただし、神経科学と他分野を定量的な解析手法でつなぐ横断的研究(成長円錐の走性・神経細胞内の1分子計測・神経発生)などは対象に含めます。
また、マイクロアレイなどの網羅的な解析を中心とした研究も現時点では対象に含めていません。ただし、網羅的な解析を発展させ、高い定量性持たせることを追求するような研究については対象に含めます。