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*深澤 愛子(京都大学 物質-細胞統合システム拠点) | *深澤 愛子(京都大学 物質-細胞統合システム拠点) | ||
− | * | + | *要旨:蛍光イメージングは、様々なバイオイメージングの方法論の中でも、非侵襲性や感度の高さという点で優れており、現代の生物学研究に必要不可欠な実験手法の一つである。ここで必要なのが発光性物質であり、有機小分子蛍光色素は蛍光タンパク質や量子ドットと比較して分子設計の自由度が格段に高いことから、標的組織への局在能や特定の物質に対するセンシング能の発現など、様々な原理に基づく蛍光プローブが開発されてきた。しかしながら、肝心の発光機能を担う色素骨格に目を向けてみると、現状の分子設計のほとんどが未だにキサンテンやシアニンといった古典的な蛍光色素の構造修飾に依存している。すなわち、これらの色素骨格が本質的に苦手とする光学特性を実現するためには、既存の色素の構造修飾による微調整では実現できない。これに対して我々は最近、独自の色素骨格の設計により、細胞内の局所的な極性環境を感知する蛍光色素 LipiDye [1]や、趙耐光性ともいえる突出した耐光性をもつ蛍光色素 PhoxBright[2,3]、高い水溶性と安定性をあわせもつ近赤外発光性色素 Phospha-fluorescein[4]など、いくつかの新奇蛍光色素の開発に成功した。これらは、古典的な色素骨格では到底達成できない優れた特性をもつ全く新しいタイプの蛍光色素群である。本発表では、もともとバイオイメージングに縁もゆかりもなかった有機合成化学者の我々がこの研究を始めることになった経緯や、生命科学者と化学者のコラボレーションによる野心的な協働研究のあらましについても紹介する。 |
*参考文献 | *参考文献 | ||
+ | **[1] E. Yamaguchi, A. Fukazawa, M. Taki, Y. Sato, T. Higashiyama, S. Yamaguchi et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2015, 54, 4539. | ||
+ | **[2] C. Wang, A. Fukazawa, M. Taki, Y. Sato, T. Higashiyama, S. Yamaguchi, Angew. Chem. Int. Ed., 2015, 54, 15213. | ||
+ | **[3] C. Wang, M. Taki, Y. Sato, A. Fukazawa, T. Higashiyama, S. Yamaguchi J. Am. Chem. Soc. 2017, 139, 10374. | ||
+ | **[4] (a) A. Fukazawa, S. Suda, M. Taki, E. Yamaguchi, M. Grzybowski, Y. Sato, T. Higashiyama, S. Yamaguchi, Chem. Commun. 2016, 52, 1120. (b) A. Fukazawa, J. Usuba, R. A. Adler, S. Yamaguchi, Chem. Commun. 2017, 53, 18565. | ||
==10:30-11:00 機械学習が駆動する画像無しイメージングフローサイトメトリー== | ==10:30-11:00 機械学習が駆動する画像無しイメージングフローサイトメトリー== |
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セッション2 技術が加速させる 1/14 午前
Chair: 国田勝行(奈良先端大)
10:00-10:30 蛍光イメージングの限界を打破するための新奇な色素分子の設計
- 深澤 愛子(京都大学 物質-細胞統合システム拠点)
- 要旨:蛍光イメージングは、様々なバイオイメージングの方法論の中でも、非侵襲性や感度の高さという点で優れており、現代の生物学研究に必要不可欠な実験手法の一つである。ここで必要なのが発光性物質であり、有機小分子蛍光色素は蛍光タンパク質や量子ドットと比較して分子設計の自由度が格段に高いことから、標的組織への局在能や特定の物質に対するセンシング能の発現など、様々な原理に基づく蛍光プローブが開発されてきた。しかしながら、肝心の発光機能を担う色素骨格に目を向けてみると、現状の分子設計のほとんどが未だにキサンテンやシアニンといった古典的な蛍光色素の構造修飾に依存している。すなわち、これらの色素骨格が本質的に苦手とする光学特性を実現するためには、既存の色素の構造修飾による微調整では実現できない。これに対して我々は最近、独自の色素骨格の設計により、細胞内の局所的な極性環境を感知する蛍光色素 LipiDye [1]や、趙耐光性ともいえる突出した耐光性をもつ蛍光色素 PhoxBright[2,3]、高い水溶性と安定性をあわせもつ近赤外発光性色素 Phospha-fluorescein[4]など、いくつかの新奇蛍光色素の開発に成功した。これらは、古典的な色素骨格では到底達成できない優れた特性をもつ全く新しいタイプの蛍光色素群である。本発表では、もともとバイオイメージングに縁もゆかりもなかった有機合成化学者の我々がこの研究を始めることになった経緯や、生命科学者と化学者のコラボレーションによる野心的な協働研究のあらましについても紹介する。
- 参考文献
- [1] E. Yamaguchi, A. Fukazawa, M. Taki, Y. Sato, T. Higashiyama, S. Yamaguchi et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2015, 54, 4539.
- [2] C. Wang, A. Fukazawa, M. Taki, Y. Sato, T. Higashiyama, S. Yamaguchi, Angew. Chem. Int. Ed., 2015, 54, 15213.
- [3] C. Wang, M. Taki, Y. Sato, A. Fukazawa, T. Higashiyama, S. Yamaguchi J. Am. Chem. Soc. 2017, 139, 10374.
- [4] (a) A. Fukazawa, S. Suda, M. Taki, E. Yamaguchi, M. Grzybowski, Y. Sato, T. Higashiyama, S. Yamaguchi, Chem. Commun. 2016, 52, 1120. (b) A. Fukazawa, J. Usuba, R. A. Adler, S. Yamaguchi, Chem. Commun. 2017, 53, 18565.
10:30-11:00 機械学習が駆動する画像無しイメージングフローサイトメトリー
- 太田 禎生(東京大学 先端科学技術研究センター)
- 要旨:大量の細胞をその形態に基づいて分析ならびに選択的に分取する技術への必要性は、生命科学研究だけでなく、希少細胞検出からの医療診断や、品質管理された細胞医療応用など医療、産業分野でも日々増しています。しかし従来の、顕微鏡で見た目を評価して人手を介して一つ一つ分取する方式は、実用性に限界がありました。具体的には、低スループットなため大量のサンプルを処理できなかった上、処理に時間がかかる結果、細胞状態に変化を与える懸念がありました。また人の目での選別では、精度や再現性にも限界がありました。一方、セルソーター(フローサイトメトリー)は高いスループット(>万細胞/毎秒)を誇ってきましたが、1細胞あたりの蛍光量は計測できても、細胞の蛍光イメージ(形態)情報を計測・解析する事はできませんでした。そのため、両者の長所を併せ持つ蛍光イメージ認識型セルソーターが長く望まれてきました。しかし、これを実現するためには、安価で高速で高感度なイメージング手法と、高速で流れ抜ける細胞に対して単一デバイスで計測・分析・分取まで完結できるリアルタイムイメージ情報処理手法の開発が、重大な課題となっていました。そこで私たちは、光・流体・電気ハードウェアと機械学習ソフトウェアを密に結合することで、上記の両課題を一挙に解決し、世界で初めて機械学習駆動型の光イメージ認識型のセルソーターを実現しました。具体的には、新規高速・高感度イメージング技術の開発に際し『特殊な構造照明光上での対象の「動き」を利用して対象像を捉える』という新コンセプトで、高速(>万枚/秒)で蛍光など暗い対象も撮影できる単一画素圧縮撮像手法(Ghost Motion Imaging)を開発しました。そして、人を介さない画像解析に画像は必要ない点に着目し、『画像(人が認識するためのデータ形式)を作らずに、単一画素圧縮計測信号を直接機械学習モデル(人工知能)に判別させる』という、コンセプトを実装し、安価で正確なリアルタイムでの高速イメージングデータ処理法(ゴーストサイトメトリー法)を開発しました。そして最終的にマイクロ流体細胞分離技術と融合することにより、光イメージ認識型の高速細胞分離を実現しました。上記においては、「イメージデータの価値の本質は何なのか」と疑問を持つ視点が、ハードや情報技術を真に融合させたシステム開発に繋がりました。これは、従来の別々に開発された既存技術を直列に並べるだけの「融合」技術とは一線を画す技術思想です。本講演では、データの価値を見つめ直す取り組みの一つとして、ご紹介できればと思います。
- 参考文献
11:00-11:30 動物の行動戦略を解読する逆強化学習法と線虫行動への応用
- 本田直樹(京都大学 生命科学研究科)+池田宗樹(名古屋大学 理学研究科)
- 要旨:動物は外界の状況に応じて、より多くの報酬が期待できる行動戦略を持って行動していると考えられる。しかし、報酬には食料などの直接的なもののみならず、間接的にそれらに結びつくものもあるため、動物の行動を単に観察しているだけでは、「動物が何を報酬として行動しているのか、何に価値を置いて行動しているのか?」を知ることは困難であった。また脳内では、報酬はドーパミンによって表現されていることから、動物にとって何が報酬となっているのかを明らかにすることは、行動戦略を司る神経メカニズムの理解のためにも重要ある。そこで我々は行動時系列データからその裏に潜む戦略や未知の報酬を解読する機械学習法(逆強化学習)を考案した。この手法を線虫の温度走性行動へと応用することで、線虫にとっての報酬や行動戦略を明らかにすることができた。
- 参考文献