Difference between revisions of "2018 9thqbio cooperativity"
From Japanese society for quantitative biology
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*青木 一洋(自然科学研究機構 生命創成探究センター 基礎生物学研究所) | *青木 一洋(自然科学研究機構 生命創成探究センター 基礎生物学研究所) | ||
*要旨:Ras-ERK MAPキナーゼシグナル伝達経路は進化的に保存された細胞内シグナル伝達経路であり、細胞増殖や分化、腫瘍新生に深く関与している。このERKシグナル伝達経路はこれまで精力的に研究されてきたが、以前としてERK経路がどのようにして多様な表現型を生み出しているのかについては十分解明されていない。我々は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の原理に基づくバイオセンサーを用いて、生きた細胞におけるERK活性の動態を可視化してきた。本会では、ERK活性の細胞間伝搬が細胞集団運動の効率と方向性を決めているという結果について紹介する。上皮細胞由来のMDCK細胞やマウスの基底層細胞における損傷治癒過程におけるERK活性を可視化すると、その傷口から後方にむかって大きなERK活性の伝搬波が起き、細胞はERK活性の伝搬と逆らうように集団運動することが観察された。ADAM阻害剤によりERK活性伝搬を抑制すると、細胞集団運動は抑制された。またERK活性伝搬はアクトミオシンを制御し細胞集団運動を誘導していることが分かった。さらに、光遺伝学的な手法により、ERK活性の伝搬を再構成すると、細胞集団運動を引き起こすことができることが分かった。数理モデルを使った解析から、ERK活性伝搬による細胞集団運動は、ERK活性化による細胞面積の増加(密度の現象)と細胞運動性の上昇の2点によって説明できることが分かった。これらの結果は、細胞がどのようにして細胞集団運動の方向性を決定するかという分子基盤に新たな知見を与えるものである。一方で、九州大学の前多グループから非平衡輸送現象が報告されており、ERK活性伝搬による細胞集団運動と共通の原理で非平衡輸送現象が起きることが示唆されている。細胞集団運動と非平衡輸送現象との接点について最後に議論したい。 | *要旨:Ras-ERK MAPキナーゼシグナル伝達経路は進化的に保存された細胞内シグナル伝達経路であり、細胞増殖や分化、腫瘍新生に深く関与している。このERKシグナル伝達経路はこれまで精力的に研究されてきたが、以前としてERK経路がどのようにして多様な表現型を生み出しているのかについては十分解明されていない。我々は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の原理に基づくバイオセンサーを用いて、生きた細胞におけるERK活性の動態を可視化してきた。本会では、ERK活性の細胞間伝搬が細胞集団運動の効率と方向性を決めているという結果について紹介する。上皮細胞由来のMDCK細胞やマウスの基底層細胞における損傷治癒過程におけるERK活性を可視化すると、その傷口から後方にむかって大きなERK活性の伝搬波が起き、細胞はERK活性の伝搬と逆らうように集団運動することが観察された。ADAM阻害剤によりERK活性伝搬を抑制すると、細胞集団運動は抑制された。またERK活性伝搬はアクトミオシンを制御し細胞集団運動を誘導していることが分かった。さらに、光遺伝学的な手法により、ERK活性の伝搬を再構成すると、細胞集団運動を引き起こすことができることが分かった。数理モデルを使った解析から、ERK活性伝搬による細胞集団運動は、ERK活性化による細胞面積の増加(密度の現象)と細胞運動性の上昇の2点によって説明できることが分かった。これらの結果は、細胞がどのようにして細胞集団運動の方向性を決定するかという分子基盤に新たな知見を与えるものである。一方で、九州大学の前多グループから非平衡輸送現象が報告されており、ERK活性伝搬による細胞集団運動と共通の原理で非平衡輸送現象が起きることが示唆されている。細胞集団運動と非平衡輸送現象との接点について最後に議論したい。 | ||
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*川口 喬吾(理化学研究所) | *川口 喬吾(理化学研究所) | ||
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Revision as of 10:51, 15 November 2018
セッション2 技術が加速させる 1/14 午後
チェアー: 高木拓明(奈良医大)
14:00-14:30 細胞の物理2019
- 谷本 博一(横浜市立大学 国際総合科学部)
- 要旨:TBA
- 参考文献
14:30-15:00 細胞集団運動と非平衡輸送現象の接点
- 青木 一洋(自然科学研究機構 生命創成探究センター 基礎生物学研究所)
- 要旨:Ras-ERK MAPキナーゼシグナル伝達経路は進化的に保存された細胞内シグナル伝達経路であり、細胞増殖や分化、腫瘍新生に深く関与している。このERKシグナル伝達経路はこれまで精力的に研究されてきたが、以前としてERK経路がどのようにして多様な表現型を生み出しているのかについては十分解明されていない。我々は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の原理に基づくバイオセンサーを用いて、生きた細胞におけるERK活性の動態を可視化してきた。本会では、ERK活性の細胞間伝搬が細胞集団運動の効率と方向性を決めているという結果について紹介する。上皮細胞由来のMDCK細胞やマウスの基底層細胞における損傷治癒過程におけるERK活性を可視化すると、その傷口から後方にむかって大きなERK活性の伝搬波が起き、細胞はERK活性の伝搬と逆らうように集団運動することが観察された。ADAM阻害剤によりERK活性伝搬を抑制すると、細胞集団運動は抑制された。またERK活性伝搬はアクトミオシンを制御し細胞集団運動を誘導していることが分かった。さらに、光遺伝学的な手法により、ERK活性の伝搬を再構成すると、細胞集団運動を引き起こすことができることが分かった。数理モデルを使った解析から、ERK活性伝搬による細胞集団運動は、ERK活性化による細胞面積の増加(密度の現象)と細胞運動性の上昇の2点によって説明できることが分かった。これらの結果は、細胞がどのようにして細胞集団運動の方向性を決定するかという分子基盤に新たな知見を与えるものである。一方で、九州大学の前多グループから非平衡輸送現象が報告されており、ERK活性伝搬による細胞集団運動と共通の原理で非平衡輸送現象が起きることが示唆されている。細胞集団運動と非平衡輸送現象との接点について最後に議論したい。
- 参考文献
15:30-16:00 多細胞現象の非平衡物理
- 川口 喬吾(理化学研究所)
- 要旨:TBA
- 参考文献