From Japanese society for quantitative biology

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セッション3「定量生物学最前線(仮)」11/7午後

14:00-16:30
Chair: TBA

14:00-14:30 「定量的な考え方は長鎖ノンコーディングRNAの謎を解くか」

  • 中川 真一(北大・薬学)
  • 要旨:ヒトやマウスなどの高等真核生物のゲノムからはタンパク質をコードしないノンコーディングRNAが大量に転写されており、その大半が長さが200塩基以上の、いわゆる長鎖ノンコーディングRNAによって占められている。長鎖ノンコーディングRNAの機能解析は、RNAサイレンシングに関わる「小さなRNA」に比べると大きく出遅れていたが、近年の解析によって、エピゲノム制御に関わるもの、構造体の骨格として働くもの、分子スポンジとして働くもの、転写産物そのものには機能がなくその領域が転写されることが重要なもの、といったグループに分けられることが明らかとなりつつある。とはいえ、個体レベルでの生理機能や動作原理については依然として不明な点が多く、実際、細胞レベルで確認された分子機能が機能欠失個体を用いた解析では全く確認できない、という困った事態にしばしば遭遇するのも事実である。本講演では、「何かおかしいのは確実だけれども具体的にどこがどうおかしいのかさっぱりわからない」Neat1のノックアウトマウスを例にとり、どのような解析が足りないのか、どのような考え方をすれば一見矛盾する結果を「定量的に」説明することができるのか、ということを議論していきたい。

14:30-15:00 「哺乳類の冬眠の分子制御機構解明にむけたアプローチ」

  • 山口 良文(北大・低温科学研究所)
  • 要旨:冬眠は、飢餓・寒冷等の苛酷な環境を、代謝を抑制した低体温状態で乗り切る生命現象である。恒温性を獲得した哺乳類の多くは低体温での生存は不可能であり冬眠できないが、ハムスター、シマリスなど、一部の哺乳類は低体温での長期生存が可能な冬眠動物である。冬眠動物が示す冬眠を可能とする性質として、低体温耐性、貯蔵脂肪の効率的な燃焼機構、長期間の寝たきりに伴う廃用筋萎縮への耐性などが知られる。これらの性質は、基礎生物学的観点からも医学的観点からも大変興味深いものであるが、その分子機構は未だ殆ど不明である。私たちは、哺乳類の冬眠の分子機構解明を目指し、実験室での飼育と冬眠誘導が比較的容易なシリアンハムスターを冬眠モデル動物として研究を行っている。シリアンハムスターは、短日寒冷下に長期間さらされると体が「冬仕様」へと変化し冬眠を行う。「冬仕様」のシリアンハムスターの体では、基礎体温と体重セットポイントの変更、白色脂肪や骨格筋のリモデリング、低温耐性の増強等が生じていることを私たちは見出した。本講演では、これらの知見について、哺乳類の冬眠の基礎知識の解説を合わせて紹介したい。

15:00-15:30 「ヌクレオソーム分解能でのゲノム3次元構造の定量解析」

  • 谷口 雄一(理研・BDR)
  • 要旨:生命の遺伝情報を担うゲノムは、細胞内において、160〜200塩基対毎にヒストン8量体に巻きついて形成される“ヌクレオソーム”を最小構造単位として存在している。しかしながら、実際の細胞内でこのヌクレオソームがどのように並んで存在しているのかは、これまでの研究ではあまりよくわかっていなかった。そこで我々は、ゲノムの3次元構造をヌクレオソーム分解能で決定する手法の開発に取り組み、最近これに成功した[1]。この開発のため、従来の次世代シーケンサーを用いた実験法(Hi-C法)の高分解能化を行うと共に、ゲノム内の全てのヌクレオソームを3次元モデリングする新たな計算法の開発を行った。実験法の開発では、ゲノム上の各ヌクレオソームのDNA巻きつき開始・終了点間の近接関係をそれぞれ解析できる方法を構築した。これに対し計算法の開発では、大規模な分子動力学計算をスーパーコンピューター上で実験データに基づいて行い、各ヌクレオソームの位置と配向を含む全ゲノムの3次元分子構造を決定する方法を構築した。開発した技術は、”Hi-C” with nucleosome “O”rientationの略からと、さらに「配向」が解析できる特徴から、「Hi-CO」法と名付けた。結果、1つ1つのヌクレオソームのレベルから全染色体のレベルに至る、ゲノムの階層構造が初めて実験的に明らかになった。面白いことに、出芽酵母のゲノム構造の解析を行ったところ、これまで規則的に並んでいると考えられていたヌクレオソームの配列が、実は2通りのヌクレオソーム配列(正四面体型とひし形型)の組み合わせによって成り立っていることが見えてきた。タンパク質の折り畳み構造の基本構造であるαヘリックス・βシートにちなんで、両者をαテトラへドロン・βロンバス構造と命名した。さらには、ヌクレオソームの配置構造が、遺伝子の発現制御の性質と密接に関連して有意に変化していることを見つけた。この結果は、細胞がどのようにして分化や発生などの際に、それぞれの遺伝子の発現をコントロールしているか、その分子機序を知るための重要な基礎となると考えられる。今後、ヒトを含む様々な生物種に解析を拡張することにより、ヌクレオソーム配置構造とゲノム機能のさらなる詳細な相関性や、ゲノム構造による遺伝子発現の制御原理、疾患や薬剤存在下におけるゲノム構造の可変性などが明らかになってくると期待される。
  • 参考文献
    • Ohno, M., et al., Sub-nucleosomal Genome Structure Reveals Distinct Nucleosome Folding Motifs, Cell 176, 520-534 (2019)

15:30-16:00 「遠心偏光顕微鏡CPMを用いた細胞内の力の定量化」

  • 木村 暁 (遺伝学研究所):
  • 要旨:分子生物学実験において遠心分離機は日々の実験に欠かせない。一方、遠心中のサンプルを見ることはほとんどない。遠心力をかけた状態で細胞を観察することを可能にする遠心顕微鏡は1931年にすでに報告され、いくつかの研究に用いられてきた。しかし、サンプルを高速で回転することと、安定した顕微鏡像を得ることの両立は難しく、低速あるいは低解像度での観察にとどまってきた。この状況を打破したのが、Inouéらが開発した遠心偏光顕微鏡(CPM)である[1]。CPMは高速回転(最大10,000×g)と高解像度(1μm以上の分解能)を両立する。我々はCPMを用いて、線虫胚に遠心力をかけることによって細胞核を人為的に移動させ、その動きを定量化することに成功した。また、Shribakらが開発した方向非依存微分干渉顕微鏡(OI-DIC)[2]を用いて、核と細胞質の密度差を定量することにも成功した。密度差の情報を使えば、遠心速度を力に変換することができ、細胞内で核を動かしている力を定量化することができる。本発表では、これらの顕微鏡で得られた定量結果を報告し、細胞核のような大きい構造物を細胞内で移動させるメカニズムについて議論する。
  • 参考文献
    • Inoué et al, J Microscopy 2001. [2] Shribak & Inoué, App Optics 2006.

本研究は、CPMとOI-DICが設置されている米国Marine Biological Laboratoryなどの支援を受けて実施し、CPMの開発者の一人でもある合田真博士らとの共同研究で行なっています。

16:00-16:30 「2光子スピニングディスク共焦点顕微鏡を用いた3Dマルチカラー生細胞イメージング」

  • 村田 隆(基礎生物学研究所)
  • 要旨:蛍光イメージングで生命現象の分子機構を理解するためには、複数の因子を単一の個体や細胞内で同時に可視化して、その動態を時系列を追って観察することが望ましい。また、生物は立体的な構造を持つので、着目する因子の3次元的な分布を明らかにすることが望ましい。その一方で、蛍光イメージングにおいては標識の数、時間解像度、空間解像度、深さ情報の取得はトレードオフの関係にあるため、すべてを同時に向上させることは難しい。この問題を解決するため、我々はスピニングディスク共焦点ユニットと2光子励起法を組み合わせた2光子スピニングディスク共焦点顕微鏡(CSU-MP)を構築し、厚みのある試料で低侵襲に高速、高解像度の3D画像取得を行うことに成功した。しかしながら、2光子励起では励起だけでなく光退色も非線形に起こり、その特性は蛍光タンパク質ごとに異なるため、多標識のタイムラプス解析に用いるには使用する蛍光タンパク質、励起波長、レーザ強度の最適化が必要だった。本講演ではCSU-MPを使った多標識3Dタイムラプス観察を用いた研究例として植物の紡錘体形成の解析を紹介する。
  • 参考文献
    • Otomo et al. (2015) Anal. Sci. 31, 307-313.
    • Murata et al. (2015) Plant Morphology 27, 27-32.
北海道キャラバン2019ウェブサイト