From Japanese society for quantitative biology

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Contents

セッション1 時空をまたぐ 1/13午後

前半:13:30-14:30(引き続き、15:00までショートトーク)
後半:16:30-17:30(引き続き、18:00までショートトーク)

Chair: 村田隆(基生研)木村暁(遺伝研)

13:30-14:00 組織形態を決める細胞骨格の時空間制御

  • 進藤 麻子(名古屋大学 理学研究科)
  • 要旨:多細胞生物の胚発生過程で生じる組織の形態形成と維持において、細胞が集団としての秩序を保ちながら協調的に行う形態変化と移動は根源的に重要な現象である。細胞の移動や形態変化の駆動力として、アクチン重合、非筋型ミオシンⅡのリン酸化によるアクトミオシンの活性化と両者の相互作用が主に研究されてきた[1]。しかし、集団的な細胞運動に特有の隣接細胞との協調的制御、それに伴う駆動力の時空間的な制御とその意義については不明な点が多く残されている。私たちはアクトミオシンが駆動する形態形成モデルとして、アフリカツメガエル胚の脊索形成時に見られる収斂伸長運動と、胚組織の創傷修復過程に着目してきた[2, 3]。アクトミオシンはその収縮力を発動する際、活性と不活性を繰り返すオシレーションを示すことが知られる。今回、ライブイメージングと数理モデルによるシミュレーションを組み合わせた結果、収斂伸長運動ではアクトミオシンは適切な頻度でオシレーションし、かつ隣接細胞間でオシレーションが同期しないことが効率的な組織形態変化に重要であることがわかってきた。一方で、迅速な細胞移動が要求される創傷修復においてはアクトミオシンの明らかなオシレーションは見られず、隣接する細胞が同期して持続的な収縮を示していた。本講演では局所におけるアクトミオシン動態と組織形態の関係、およびそれらの多様性について議論する。
  • 参考文献

14:00-14:30 細胞壁パターン形成

  • 小田 祥久(国立遺伝学研究所)
  • 要旨:細胞膜上でのタンパク質の偏在化は細胞の成長や機能の形成において欠かせない現象である。植物細胞では細胞膜に密接した微小管の配列パターンが細胞壁の沈着パターンを決定し、それが細胞の形態に反映される。しかしながら微小管やその配列を制御するタンパク質が細胞膜上で適切なパターンに配置されてゆく仕組みは未だに理解できていない。我々は規則的な細胞壁パターンを構築する道管の細胞をモデルとして、独自の細胞培養系やin vivo再構築、数理モデルを用いてこの問題に取り組んできた。その結果、Rho型低分子量GTPaseによる細胞骨格の制御経路が中心となり、自律的に細胞壁パターンが作り出される仕組みが見えてきた。これまでにRho GTPaseが細胞膜上で局所的に活性化しエフェクターを介して微小管を脱重合すること、この活性化したRhoが植物にユニークな微小管付随タンパク質を介して周囲の微小管と排他的に相互作用することが明らかとなった。また、活性化したRhoはアクチン繊維を介してこの排他的な相互作用の境界で細胞壁の形成を制御していることも分かってきた。Rho GTPaseが活性化する空間パターンはRhoの活性化因子と不活性化因子により制御されており、その振る舞いが反応拡散系で説明し得るという示唆を得ている。本講演ではこれらの知見を紹介し、細胞が自律的に細胞膜上に空間パターンを構築する仕組みについて議論したい。
  • 参考文献

16:30-17:00 エンハンサーによる転写制御動態

  • 深谷雄志(東京大学 定量生命科学研究所)
  • 要旨:転写制御において中心的な役割を担うのはエンハンサーと呼ばれる機能性非コードDNA領域である。エンハンサーは結合する転写因子からのインプットを統合し、個体発生における遺伝子発現の時空間的特異性を決定する重要な役割を担う。我々はショウジョウバエ初期胚において転写活性をリアルタイムかつ一細胞解像度で可視化する独自のライブイメージング技術を構築し、エンハンサーによる転写制御の時空間動態の解明に取り組んだ。その結果、エンハンサーが「転写バースト」と呼ばれる転写活性の不連続性を緻密に調節することによって、遺伝子発現を制御していることが明らかとなった。さらに、エンハンサーは複数遺伝子に同時に作用し、同調的な転写バーストを引き起こすという新たな転写制御機構の存在を明らかにした。さらにエンハンサーが相同染色体間で作用する「Transvection」と呼ばれる遺伝現象をリアルタイム可視化する実験系を構築することで、単一のエンハンサーが相同染色体間で隔てられた二つの遺伝子から同調的な転写を生み出すことを発見した。このことは、エンハンサーが転写因子やRNA Polymerase IIが局所的に凝集した微小環境を作り出すことによって、遺伝子発現を動的に制御しているという新たな転写制御機構の存在を示唆している。
  • 参考文献

17:00-17:30 母性ヒストンによる新しいゲノム刷り込み機構

  • 井上 梓(理化学研究所)
  • 要旨:ゲノムインプリンティング(刷り込み)は片アレル性の遺伝子発現を制御するエピジェネティック制御機構であり、哺乳類の発生に必須である。1991年にインプリント遺伝子が初めて同定されて以来、これまでに100個近くが同定されてきたが、それらは配偶子に由来するDNAメチル化修飾で制御されるというのが定説であった。その一方で、X染色体不活性化に必須なXist遺伝子を含むいくつかのインプリント遺伝子は、配偶子のDNAメチル化を欠損させても片アレル性発現することから、DNAメチル化に非依存的なインプリンティング制御機構があるのではないかと囁かれていた。インプリンティング研究はややこしいので敬遠していた私は、精子と卵子のエピゲノムが受精後にどのようにリプログラムされて均質化されるのか、という疑問を長らく研究していた。このテーマを掘り下げていくうちに、卵子由来の母性ゲノムには、DNAメチル化非依存的に受精後のリプログラムを免れる領域があることに気が付いた。そして微量エピゲノム解析とエピゲノム操作により、卵子から受精卵に引き継がれるヒストンH3リジン27番目のトリメチル化(H3K27me3)修飾が母性アレルのリプログラミング抵抗性に寄与することを見出した。そして、抑制性のエピジェネティック修飾であるH3K27me3が受精後に母性アレル特異的に存在することで、父性アレル特異的な遺伝子発現を可能にしていることがわかった。このH3K27me3によるインプリンティング機構は、DNAメチル化に非依存的として報告されていた全てのインプリント遺伝子を制御していた(Inoue et al., Nature 2017; Genes Dev 2017; Genes Dev, 2018)。本講演では、この新しいインプリンティング制御機構の機能と新たに生じてきた疑問について議論したい。
  • 参考文献

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