From Japanese society for quantitative biology

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Contents

セッション3 部分の総和を超える」 1/14 午後

チェアー: 高木拓明(奈良医大)

14:00-14:30 細胞の物理2019

  • 谷本 博一(横浜市立大学 理学部)
  • 要旨:ウニの受精卵細胞の中で微小管星状体が生み出す力を測定した実験を題材にして、細胞生物学的現象に対する物理学的研究アプローチの可能性を議論する。

14:30-15:00 細胞集団運動と非平衡輸送現象の接点

  • 青木 一洋(自然科学研究機構 生命創成探究センター 基礎生物学研究所)
  • 要旨:Ras-ERK MAPキナーゼシグナル伝達経路は進化的に保存された細胞内シグナル伝達経路であり、細胞増殖や分化、腫瘍新生に深く関与している。このERKシグナル伝達経路はこれまで精力的に研究されてきたが、以前としてERK経路がどのようにして多様な表現型を生み出しているのかについては十分解明されていない。我々は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の原理に基づくバイオセンサーを用いて、生きた細胞におけるERK活性の動態を可視化してきた。本会では、ERK活性の細胞間伝搬が細胞集団運動の効率と方向性を決めているという結果について紹介する。上皮細胞由来のMDCK細胞やマウスの基底層細胞における損傷治癒過程におけるERK活性を可視化すると、その傷口から後方にむかって大きなERK活性の伝搬波が起き、細胞はERK活性の伝搬と逆らうように集団運動することが観察された。ADAM阻害剤によりERK活性伝搬を抑制すると、細胞集団運動は抑制された。またERK活性伝搬はアクトミオシンを制御し細胞集団運動を誘導していることが分かった。さらに、光遺伝学的な手法により、ERK活性の伝搬を再構成すると、細胞集団運動を引き起こすことができることが分かった。数理モデルを使った解析から、ERK活性伝搬による細胞集団運動は、ERK活性化による細胞面積の増加(密度の現象)と細胞運動性の上昇の2点によって説明できることが分かった。これらの結果は、細胞がどのようにして細胞集団運動の方向性を決定するかという分子基盤に新たな知見を与えるものである。一方で、九州大学の前多グループから非平衡輸送現象が報告されており、ERK活性伝搬による細胞集団運動と共通の原理で非平衡輸送現象が起きることが示唆されている。細胞集団運動と非平衡輸送現象との接点について最後に議論したい。
  • 参考文献

15:00-15:30 多細胞現象の非平衡物理

  • 川口 喬吾(理化学研究所)
  • 要旨:哺乳類の成体では細胞が絶えず失われているが、それが細胞分裂により補われるしくみはほとんど分かっておらず、特に上皮幹細胞のダイナミクスに関しては歴史的にさまざまな説が唱えられてきた。近年のクローン染色実験によって、上皮幹細胞の運命選択(分化による喪失または分裂による増殖)は細胞自律的な確率過程に従うとされ、この問題には決着がついたかに思われた。しかし、上皮幹細胞が二次元系をなしていることと関連して、細胞が本当に自律的に運命を決めているのか、空間的に近い細胞の運命の間に相互作用があるのかは、実のところ未解明であった。今回われわれは、生きたマウスの上皮幹細胞を1週間にわたり観察したデータを解析した。その結果、細胞の運命決定が自律的でないばかりか、分化によって生じた穴に隣接する細胞が分裂によりその穴を埋めるという、強い相互作用があることを見つけた。本講演では、成体組織恒常性に関連する理論モデルについて説明する。加えて、多細胞集団で見られるほかの非平衡現象についても、理論と実験の協同的な発展についていくつか紹介する。
  • 参考文献

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