2018 9thqbio spatiotemporal

From Japanese society for quantitative biology

セッション1 時空をまたぐ 1/13午後

13:30-14:00 組織形態を決める細胞骨格の時空間制御

  • 進藤 麻子(名古屋大学)
  • 要旨:TBA
  • 参考文献

14:00-14:30 細胞壁パターン形成

  • 小田 祥久(国立遺伝学研究所)
  • 要旨:TBA
  • 参考文献

16:30-17:00 エンハンサーによる転写制御動態

  • 深谷雄志(東京大学 定量生命科学研究所)
  • 要旨:転写制御において中心的な役割を担うのはエンハンサーと呼ばれる機能性非コードDNA領域である。エンハンサーは結合する転写因子からのインプットを統合し、個体発生における遺伝子発現の時空間的特異性を決定する重要な役割を担う。我々はショウジョウバエ初期胚において転写活性をリアルタイムかつ一細胞解像度で可視化する独自のライブイメージング技術を構築し、エンハンサーによる転写制御の時空間動態の解明に取り組んだ。その結果、エンハンサーが「転写バースト」と呼ばれる転写活性の不連続性を緻密に調節することによって、遺伝子発現を制御していることが明らかとなった。さらに、エンハンサーは複数遺伝子に同時に作用し、同調的な転写バーストを引き起こすという新たな転写制御機構の存在を明らかにした。さらにエンハンサーが相同染色体間で作用する「Transvection」と呼ばれる遺伝現象をリアルタイム可視化する実験系を構築することで、単一のエンハンサーが相同染色体間で隔てられた二つの遺伝子から同調的な転写を生み出すことを発見した。このことは、エンハンサーが転写因子やRNA Polymerase IIが局所的に凝集した微小環境を作り出すことによって、遺伝子発現を動的に制御しているという新たな転写制御機構の存在を示唆している。
  • 参考文献

17:00-18:00 母性ヒストンによる新しいゲノム刷り込み機構

  • 井上 梓(理化学研究所)
  • 要旨:ゲノムインプリンティング(刷り込み)は片アレル性の遺伝子発現を制御するエピジェネティック制御機構であり、哺乳類の発生に必須である。1991年にインプリント遺伝子が初めて同定されて以来、これまでに100個近くが同定されてきたが、それらは配偶子に由来するDNAメチル化修飾で制御されるというのが定説であった。その一方で、X染色体不活性化に必須なXist遺伝子を含むいくつかのインプリント遺伝子は、配偶子のDNAメチル化を欠損させても片アレル性発現することから、DNAメチル化に非依存的なインプリンティング制御機構があるのではないかと囁かれていた。が、この分野にそのような疑問があることは、ややこしいインプリンティング研究を敬遠していた当時の私の耳には入ってこなかった。私は精子と卵子のエピゲノムが受精後にどのようにリプログラムされて均質なものになっていくのか、という疑問を長らく研究していた。生殖工学技術と微量エピゲノム解析技術を組み合わせてこのテーマを掘り下げていくうちに、リプログラムされない領域、すなわち配偶子のエピゲノムが受精後も残る領域、を網羅的に同定することに成功し、それらの多くは卵子に由来するヒストン修飾H3リジン27番目のトリメチル化(H3K27me3)で制御されることがわかった。そして偶然にも、卵子由来のH3K27me3は、DNAメチル化に非依存的として報告されていた全てのインプリント遺伝子の片アレル性発現を制御していることを見出した(Inoue et al., Nature 2017; Genes Dev 2017; Genes Dev, in press)。本講演では、DNAメチル化によらないインプリンティング制御機構の発見経緯とその機能を紹介し、これらから生じた新たな疑問について議論したい。
  • 参考文献

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