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* 松永(津田)行子 (東京大学 生産技術研究所)
 
* 松永(津田)行子 (東京大学 生産技術研究所)
 
 再生医療、薬物動態試験において、生体と同等の生理機能を有する組織の作製が望まれている。生体組織は数十~数百マイクロメートルおきに複数種の細胞が配列した階層構造を形成しており、生体機能の発現には、これらの高次構造を再構築する技術が有用であると考えられる。均一な大きさを有するマイクロサイズの細胞集団を構築できれば、配列化・三次元組立てを容易に行えるだけでなく、高次機能を有する複雑な組織構造体を作製できる可能性がある。
 
 再生医療、薬物動態試験において、生体と同等の生理機能を有する組織の作製が望まれている。生体組織は数十~数百マイクロメートルおきに複数種の細胞が配列した階層構造を形成しており、生体機能の発現には、これらの高次構造を再構築する技術が有用であると考えられる。均一な大きさを有するマイクロサイズの細胞集団を構築できれば、配列化・三次元組立てを容易に行えるだけでなく、高次機能を有する複雑な組織構造体を作製できる可能性がある。
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 そこで、本講演では、マイクロ加工技術を用いた培養細胞の規格化、空間配置制御による三次元立体組織の構築方法について紹介する。このように、細胞を規格化し、任意に配置する技術は再生医療だけでなく、再現性を必要とする生物材料を用いた定量的研究においても極めて有用であると考えられる。
 
 そこで、本講演では、マイクロ加工技術を用いた培養細胞の規格化、空間配置制御による三次元立体組織の構築方法について紹介する。このように、細胞を規格化し、任意に配置する技術は再生医療だけでなく、再現性を必要とする生物材料を用いた定量的研究においても極めて有用であると考えられる。
 
  
 
===顕微鏡の高速制御技術とその生物学への応用===
 
===顕微鏡の高速制御技術とその生物学への応用===

Revision as of 03:06, 1 November 2010

第三回年会 (セッション1)工学技術と定量生物学

講演者: 松永(津田)行子(東大)、奥寛雅(東大)、竹本智子(理研)、安達泰治(京大)

日時

2010/11/27 10:30-12:00 セッション1

Chair

  • 木村啓志(東大)

概要

ボトムアップ組織構築のための細胞集団のマイクロ制御技術

  • 松永(津田)行子 (東京大学 生産技術研究所)

 再生医療、薬物動態試験において、生体と同等の生理機能を有する組織の作製が望まれている。生体組織は数十~数百マイクロメートルおきに複数種の細胞が配列した階層構造を形成しており、生体機能の発現には、これらの高次構造を再構築する技術が有用であると考えられる。均一な大きさを有するマイクロサイズの細胞集団を構築できれば、配列化・三次元組立てを容易に行えるだけでなく、高次機能を有する複雑な組織構造体を作製できる可能性がある。

 そこで、本講演では、マイクロ加工技術を用いた培養細胞の規格化、空間配置制御による三次元立体組織の構築方法について紹介する。このように、細胞を規格化し、任意に配置する技術は再生医療だけでなく、再現性を必要とする生物材料を用いた定量的研究においても極めて有用であると考えられる。

顕微鏡の高速制御技術とその生物学への応用

  • 奥 寛雅 (東京大学大学院情報理工学系研究科)

光学顕微鏡は生命が持つ微細な構造を生きたまま観測できるため,生物学におい て非常に重要な測定機器である.しかし,その光学系がもつ限られた視野や浅い 被写界深度といった性質はしばしば厳しい制約条件となり,観測に困難を伴うこ とも少なくない.しかも,これらは高い解像力を持つ光学系特有の性質であるた め,光学系の工夫では解決できない問題である.

そこで我々は,このような光学顕微鏡が持つ困難を工学的なアプローチによって システムとして解決することを目指した研究をしている.これまで特に画像処理 技術を利用したシステムを構築してきているが,顕微鏡による像はその倍率ゆえ に通常のカメラ画像に比べて高速であることが多いため,ミリ秒での高速画像処 理・制御に注目してきた.本発表では,運動する対象を顕微鏡視野内に捕捉する ことで,対象を長時間連続的に観察できるようにする微生物トラッキング顕微鏡 と,高速なフォーカス制御を可能にする液体可変焦点レンズであるダイナモルフ レンズとその顕微鏡応用の可能性について紹介する.

細胞観察画像の定量解析のための注目点検出アルゴリズムの性能評価

  • 竹本 智子 (理化学研究所)

イメージング技術の発展により生物学における画像解析の重要性が日々高まる一 方で,画像解析技術の整備の遅れが研究のボトルネックとなっている. 例え ば,画像の注目領域の自動検出に有効な領域分割(Image segmentation)は,コン ピュータ・ビジョン分野では多くの高性能アルゴリズムが提案されているが,細 胞観察画像での成功例がきわめて少ない. これは,画像のS/Nの低さや,観察対 象の複雑形状や動的変化などが原因と考えられる.さらに,空間的,時間的に変 化が大きい観察対象に対して は,アルゴリズムの汎用性の欠如が大きな問題と なり,その都度アルゴリズムの選択やパラメータ調整を迫られる.そこで我々 は,領域分割アルゴリズ ムの性能評価システムを開発している.性能評価は, 観察者が指定した正解領域と,複数のアルゴリズムからの出力領域との比較に基 づいて行われる. これによって,観察者はアルゴリズムの特性やパラメータ調 整などを特に意識することなく,精度良い領域分割が可能なアルゴリズムを選ぶ ことができ るため,スムーズな定量解析の実現が期待できる.

骨のリモデリングによる機能的適応のシステムバイオメカニクス

  • 安達泰治 (京都大学・理化学研究所)

海綿骨の骨梁構造が,骨に作用する荷重に対応した形態を有している ことが知られている.メカノスタット理論に代表されるように,あるリ モデリング平衡状態における骨梁内部の力学状態を参照して,骨の形成 や吸収を表現する数理モデルが,これまで数多く提案されてきた.また, 実験的検討により,細胞が力や変形を感知する力学刺激感知機構やメカ ノトランスダクション機構の詳細が少しずつ明らかになってきた.しか しながら,これらの詳細な機構が細胞・分子構造レベルにおいて機能し ているのに対して,骨の力学環境や機能は巨視的なレベルにあるため, 構造・機能の階層性を詳細に考慮してそれらをシステムとして捉えるこ となくしては,リモデリングによる機能的適応メカニズムを理解するこ とは困難である.そこで本講演では,古くからWolff's Law として知ら れる骨の適応仮説を理解するための一つのアプローチとして,骨を階層 性を有する力学構造システムとして捉え,骨細胞レベルの力学刺激感知 と細胞間情報伝達を考慮することで導かれる巨視的な力学状態の一様化 と骨梁形態リモデリング現象について,数理モデリングと計算機シミュ レーションを通じて考察する.

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