第六回年会チュートリアル3

From Japanese society for quantitative biology
The printable version is no longer supported and may have rendering errors. Please update your browser bookmarks and please use the default browser print function instead.

第六回年会 (チュートリアル2)

14:45-15:45 超多重検定の考え方

  • 講演者:大羽 成征(京都大学)

1つの論文に2つ以上のp値を記載したことありますか?統計的検定多重性の問題はその瞬間から生じます。複数のp値が同時に出現した瞬間から、ひとつひとつのp値はもはや保守的判断の指標になりません。「多重性補正したの?」で数多くの議論が叩き落されてきました。

3群間の差を調べる2群間の差を3ペアで行う多重比較は、古典的な典型例としていまでも頻繁に使われています。一方で、遺伝子・顕微鏡画像・脳や神経の活動などを対象とした網羅的計測データに基く研究では、数千・数億・数兆の仮説群を同時に取り扱う状況が生じてきました。こういった状況を「超多重検定」と勝手に呼ぶことにしています。取り扱うのに必要な発想方法が変わってくるからです。

講演では、超多重検定とその基本的な取り扱い方、およびその応用例について、極力わかりやすく概観するチュートリアルを行います。とくに応用可能範囲の広い FDR (false discovery ratio)、Q-valueと、経験ベイズ検定 (Empirical Bayesian test) の考え方を中心に解説いたします。最低限の数式は躊躇せず使いますが、数式の意味や背景をゆっくりと追って、あとで使える知識にすることを目標にします。

統計的検定のお話は「知らないと大変なことになるよ」から始まる恫喝産業の側面が強く、人に嫌われやすいです。本要旨の冒頭の段落がまさにそういった恫喝の典型例です。「知ってるとこんなにいいこともあるよ」に与する最近の研究成果についても少しだけ触れることで、嫌われないように配慮する予定です。


第六回年会ページトップに戻る