第一回定量生物学の会準備会プログラム

From Japanese society for quantitative biology

会議趣旨

第一回「定量生物学の会(仮)」会議参加者の皆様

本日第一回「定量生物学の会(仮)」を東京大学駒場キャンパスにて、クローズドミーティングとして開催させていただきます。皆様には,お忙しい中参加をお引きうけいただき,誠にありがとうございます。

 現在分子生物学・発生生物学・生物物理学・そして数理生物学など生命科学研究を担う多数の領域において、「定量的な方法論で生命現象を明らかにしてゆく」という活動が今後の各領域を担う大きな方向性として同時多発的・相互依存的に浮上しつつあると思います。

 この会合はこのような背景を受け、各領域において自ら手を動かして定量的な方向性を模索している若手研究者を集めて、今後の定量的な生命科学の方向性、未来、意義、問題点などをブレインストーミング的に議論し、領域横断的な方向性や連携関係をトップダウン的にではなくボトムアップ的に模索できないか、という目的でスタートし、幸い、様々な関係者のご協力のもと、今回の開催が可能になりました。

今回はなるべく領域横断的な議論が可能になるように、参加者の人数を限ったクローズドミーティングとし、発生生物・細胞生物・分子生物・生物物理・1分子生物・数理生物・バイオインフォマティクス・バイオイメージング・生命工学などの、各分野を牽引してゆくポテンシャルと熱意を秘めていると思われる関東近辺の若手研究者に、分野の偏りがなるべく少なくなるように声をかけさせていただきました。

 現在定量的な方向性は様々な領域で、特に志のある若手によって研究が進められていると思いますが、おそらくほとんどの領域内でそのような試みはいまだマイノリティーであり、自分たちが所属している領域内の既存の会議だけでは具体的な情報交換だけでなく定量的な研究を行っている研究者間での密な議論すらも、不足している、というのが現状ではないかと思います。

 このような状況に対し、今後の定量的な生命科学の方向性や解決すべき問題点について、おそらく参加者の皆様それぞれが、具体的な意見をお持ちであると推察します。本研究会はそのような現状を踏まえ、若手研究者が情報を交換したり、外部へ情報を発信したり、そして生命科学の各領域をまたいだ今後の定量的な生命科学の方向性などの個々では解決できない問題を議論し、そして主体的に解決してゆく一つのきっかけになればよいと思っています。

 ですので、あくまで今回の会は、皆さんが集まる機会、そして考え議論するためのたたき台として位置づけられていると、世話人一同考えております。今回参加していただく発表者・参加者間での自発的かつ積極的な議論の中で、参加する人それぞれに意味がある会の方向性、そして定量的な生命科学の可能性というのが見えてくれば良い、と考えております。そのために、発表者による発表後、参加者全員での総合討論の時間を長めにとらせていただきました。

ぜひ発表者だけでなく、参加者の方々も積極的に参加していただき、有意義な時間を共有できたらと思っております。

世話人:黒澤元、小林徹也、杉村薫、舟橋啓、前多裕介

日程・会場・発表形式

  • 会議日程: 平成20年2月18日(月)11:00 ~ 18:00
  • 会議会場: 東京大学生産技術研究所
  • 発表形式:講演時間は1人 20~25分、質疑応答を含めて30分以内でお願いいたします

スケジュール

  • 趣旨説明:前多裕介、小林徹也 (11:00~11:10)
  • 午前中の講演(11:10~12:30)
    • 理研 杉村薫、東京大学 山口良文(発生生物学)
    • 遺伝研 木村暁 (発生生物学・生物物理)
    • 名古屋大学 五島剛太(細胞生物学・分子生物学)
  • 昼食 & 発表者・参加者の自己紹介 (12:30~13:30)
  • 午後の講演Ⅰ(13:30~15:00)
    • 東京大学 前多裕介:(細胞生物学・生物物理)
    • 早稲田大学 鈴木団:(生物物理)
    • 理研 日比野佳代:(細胞生物学・1分子)
  • 休憩
  • 午後の講演Ⅱ(15:10~16:30)
    • 理研 小林徹也:(インフォマティクス・数理)
    • 東京大学 澤井哲:(細胞生物学・生物物理)
  • 休憩
  • 全体討論(16:30~19:00)

全体討論のたたき台

  1. 定量的な生物学におけるBiological Question
    1. どんな問題に定量的アプローチが不可欠か?逆に定量では解けない問題はなにか?(分子生物学の範疇の問題は何か?)
    2. そのような問題はどれくらいあるのか?
    3. 旧来のバイオロジー・バイオロジストもそれを共有できるのか?
    4. 定量的な生命科学があつかう問題は、物理的・数理的な素養が無いと面白いとは思わないのか?
  2. 定量的なアプローチや技術
    1. 必要としている人、期待している人はどれくらいいるか?
    2. どうしたらそういう人たちを動かせるのか?
    3. 今定量的な方法論のコアになりつつある技術は?
    4. 今はないけれど必要な技術は?
  3. 定量に関わる人々・連携体制
    1. 各領域どれくらいの人が定量的な方向性に実際すでに関わっているのか?その割合は
    2. 各領域どれくらいの人が定量的な方向性に期待を持っているのか?その割合は
    3. すでに関わっている人々はどうやって目の前の定量特有の問題を解決しているのか?
    4. 定量的な方向性は1つの研究室だけで解決できるのか?
    5. 領域間の連携は必要か?具体的にどういった連携が必要か?
    6. どうやって領域間の相互理解を深めてゆくか?
    7. そのための具体的な仕掛けはなにか?
  4. 会について
    1. 会について何を求めるのか?
    2. 会に何ができるか?
    3. 具体的に会をとおして行いたいことは無いか?(研究会企画など)
    4. 会の名称は会を表すのに適切か?
  5. そのほか積極的に議題を募集します

発表要旨

1. 多細胞動物の発生における新しい視点と新しい計測技術

発生生物学は比較解剖学的研究から興り、胚の外科的な操作によるオーガナイザーやモザイク発生などの概念の提唱を経て、1980年代以降は遺伝学や分子生物学と結びついて発展してきました。今回の発表では、ピンセットを片手に自分の眼を頼りに研究してきた発生生物学者が、個体発生のかたさとやわらかさの表現方法を模索するにあたり、どういった問題を設定し、生物のどのような特性を計測していくべきかを、計測技術の開発も含めて議論したいと思います。
  • 氏名 杉村 薫、山口 良文
  • 所属 理研・BSI・宮脇研(杉村)、東京大学大学院薬学系研究科遺伝学教室(山口)
  • 専門 発生生物学