年会2010セッション3

From Japanese society for quantitative biology
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第二回年会 (セッション3)網羅的解析と定量生物学

日時

20010/01/11 10:00-11:00 セッション3

Chair

概要

遺伝子発現パターンを網羅的に調べたり小規模に作ったり

  • 戎家美紀(えびすやみき)(京都大学生命科学系キャリアパス形成ユニット、ebisuya@lif.kyoto-u.ac.jp )

個人的に網羅的解析の好きなところは、データがたくさんあるので色々な視点から遊べる点です。例えば私はマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析を行ってきたのですが、ある時、「一つの遺伝子の転写反応は、近傍の遺伝子に影響し得るか?」という疑問を持ちました。そこで、自分が以前に行っていたマイクロアレイデータを調べてみました。静止期にある哺乳類培養細胞を増殖因子で刺激すると、早期応答遺伝子と呼ばれる一群の遺伝子の転写が強く誘導されます。この時実は、早期応答遺伝子の周囲約100 kbに存在する遺伝子の転写量も、上昇する傾向があることを見出しました。さらにタイリングアレイを用いて調べてみると、早期応答遺伝子近傍の遺伝子だけでなく、近傍のノンコーディング領域でも転写が起こりやすくなっていました。この現象を私は、「転写の波及効果(Transcriptional ripple effect)」と名付けました。また、公開されている酵母のマイクロアレイデータを解析し、酵母にも同様の波及効果が存在すること、しかしその影響半径は約3 kbと小さいこと、などもわかってきました。このように網羅的解析は、新しい現象や法則を見つけるのに適した方法だと感じています。今後はより定量的な法則なども見つけてみたいです。

このように自然が作る遺伝子発現パターンの面白さに感嘆する一方で、最近、自分達の手で遺伝子発現パターンをデザインしてみたいとも思うようになりました。現在は、細胞間で遺伝子発現を制御し合うための、小規模な遺伝子回路を作ろうとしています。苦戦していますが、その試みも紹介させていただきたいと思います。

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