Difference between revisions of "年会2009硬派定量生物学"

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生命現象特にそのダイナミクスを定量的に明らかにするためには、現象を構成する素過程である化学反応とその速度定数のようなものを知ることは不可欠である。
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このような研究は、たとえばシステムバイオロジーの黎明期においてもその重要性が指摘されたにもかかわらず、研究として非常に堅実で派手さが少なかったため、あまりまじめに取り組まれることはなかった。
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しかし近年、様々な細胞機能がタンパクレベルで実装されていることが明らかになっているため、素過程である化学反応とそれらが実装するよりマクロな現象との整合性をしっかりと検証してゆくことが以前よりも増して重要性になっている。
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さらに物理の歴史を振り返ると、たとえば重力定数の定量化は、その定数を用いて地球の大きさなど天文学的なスケールの現象にアプローチすることを可能にしている。
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また、量子力学では、定量的なデータとその素過程との整合性を検証した結果、全く新しい知見へのヒントが得られている。
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本セッションでは、このような生命現象の素過程とより高いスケールでの挙動や機能とを結びつける定量的な研究に焦点を絞り、この分野と定量生物における他の分野との関係などを議論したい。
  
 
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=== プログラム ===

Revision as of 03:44, 13 November 2008

第一回年会 (セッション2)硬派定量生物学

日時

2008/01/11 15:00-16:30 セッション2(暫定)

企画担当者

  • 小林徹也

概要

生命現象特にそのダイナミクスを定量的に明らかにするためには、現象を構成する素過程である化学反応とその速度定数のようなものを知ることは不可欠である。

このような研究は、たとえばシステムバイオロジーの黎明期においてもその重要性が指摘されたにもかかわらず、研究として非常に堅実で派手さが少なかったため、あまりまじめに取り組まれることはなかった。

しかし近年、様々な細胞機能がタンパクレベルで実装されていることが明らかになっているため、素過程である化学反応とそれらが実装するよりマクロな現象との整合性をしっかりと検証してゆくことが以前よりも増して重要性になっている。

さらに物理の歴史を振り返ると、たとえば重力定数の定量化は、その定数を用いて地球の大きさなど天文学的なスケールの現象にアプローチすることを可能にしている。 また、量子力学では、定量的なデータとその素過程との整合性を検証した結果、全く新しい知見へのヒントが得られている。

本セッションでは、このような生命現象の素過程とより高いスケールでの挙動や機能とを結びつける定量的な研究に焦点を絞り、この分野と定量生物における他の分野との関係などを議論したい。

プログラム

(発表者順, 敬称略)

  • 15:00-15:30 笠井倫志
    • GPCRモノマー・ダイマーの直接観察:1分子蛍光法を用いて平衡のパラメーターを完全に調べる


  • 15:30-16:00 青木一洋
    • 細胞内情報伝達系の定量的反応パラメーター測定と数理モデル構築


  • 16:00-16:30 中嶋正人
    • 概日時計システム研究における生化学的アプローチ

概日リズムは約1日周期で繰り返される動的な生命現象であり、生命システム研究のモデルシステムとして、概日時計遺伝子の同定や概日リズムの定量的測定、数理理論やシミュレーションなどの実験・理論の両面から長年研究が進められてきた。しかし周期が温度に依存しないこと(温度補償性)や周期決定などの概日時計の本質的な性質をもたらす分子機構は依然未解明である。

シアノバクテリア概日時計ではKaiCリン酸化概日リズムの試験管内再構成により、周期決定や温度補償性の分子メカニズムの解明が期待されている。また現在我々は哺乳類概日時計の素過程であるリン酸化反応が温度補償されていることを明らかにしつつある。これらの成果は、概日時計の特性が、構成分子の特性により大きく規定されていることを示すものでもある。また構成的アプローチが動的な生命システムの未解明な問題を明らかにする上でも強力な手段であることを示すものでもある。


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