Difference between revisions of "第七回年会一日目 1"

From Japanese society for quantitative biology
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==遺伝子発現リズムの動的応答の定量計測==
 
==遺伝子発現リズムの動的応答の定量計測==
 
*磯村彰宏(京都大学ウイルス研究所)
 
*磯村彰宏(京都大学ウイルス研究所)
*要旨:ポストゲノムの時代になり、遺伝子の同定を中心とした研究から、遺伝子間の相互作用ネットワークにおけるダイナミクスの理解が重要な研究課題となりつつある。近年、哺乳動物細胞の様々なシグナル伝達経路において遺伝子発現の 2~3 時間の短周期リズムやパルスの存在が発見されており、DNA 修復(p53)、免疫応答(NF-kB)、発生・分化(Hes1/7)といった多細胞生物の個体維持に関わる生命現象において重要であることがわかってきた(参考文献[1-3])。
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*要旨:ポストゲノムの時代になり、遺伝子の同定を中心とした研究から、遺伝子間の相互作用ネットワークにおけるダイナミクスの理解が重要な研究課題となりつつある。近年、哺乳動物細胞の様々なシグナル伝達経路において遺伝子発現の 2~3 時間の短周期リズムやパルスの存在が発見されており、DNA 修復(p53)、免疫応答(NF-kB)、発生・分化(Hes1/7)といった多細胞生物の個体維持に関わる生命現象において重要であることがわかってきた(参考文献[1-3])。~一方で、動物や植物などの個体の概日リズムの場合、自然光への引き込み同調によって応答特性がよく調べられている。しかし、短周期リズムの 1 細胞レベルの実験では、遺伝子特異的に摂動を与えつつ応答を計測するような、計測と制御を同時に行う技術が無かった。そのため、短周期リズムは周期などの基本情報はよく調べられているが、外部刺激に対して 1 細胞レベルでどの程度ロバストでどのように応答するのかといった、システムの動的デザインが未解明である。
一方で、動物や植物などの個体の概日リズムの場合、自然光への引き込み同調によって応答特性がよく調べられている。しかし、短周期リズムの 1 細胞レベルの実験では、遺伝子特異的に摂動を与えつつ応答を計測するような、計測と制御を同時に行う技術が無かった。そのため、短周期リズムは周期などの基本情報はよく調べられているが、外部刺激に対して 1 細胞レベルでどの程度ロバストでどのように応答するのかといった、システムの動的デザインが未解明である。
 
 
最近、我々は青色光受容タンパク質 VIVID を使った青色光誘導性転写活性化システム
 
最近、我々は青色光受容タンパク質 VIVID を使った青色光誘導性転写活性化システム
 
(LightOn システム)によって遺伝子発現の短時間(2~3 時間)周期の振動を人工的に誘導できることを発見した(参考文献[4])。この光操作技術を 1 細胞イメージングと組み合わせることで、外部刺激に対する 1 細胞レベルの転写活性の動的応答を定量計測することが可能になりつつある。
 
(LightOn システム)によって遺伝子発現の短時間(2~3 時間)周期の振動を人工的に誘導できることを発見した(参考文献[4])。この光操作技術を 1 細胞イメージングと組み合わせることで、外部刺激に対する 1 細胞レベルの転写活性の動的応答を定量計測することが可能になりつつある。

Revision as of 03:36, 30 September 2014

生命デザインの定量生物学 10:20-12:20

遺伝子発現リズムの動的応答の定量計測

  • 磯村彰宏(京都大学ウイルス研究所)
  • 要旨:ポストゲノムの時代になり、遺伝子の同定を中心とした研究から、遺伝子間の相互作用ネットワークにおけるダイナミクスの理解が重要な研究課題となりつつある。近年、哺乳動物細胞の様々なシグナル伝達経路において遺伝子発現の 2~3 時間の短周期リズムやパルスの存在が発見されており、DNA 修復(p53)、免疫応答(NF-kB)、発生・分化(Hes1/7)といった多細胞生物の個体維持に関わる生命現象において重要であることがわかってきた(参考文献[1-3])。~一方で、動物や植物などの個体の概日リズムの場合、自然光への引き込み同調によって応答特性がよく調べられている。しかし、短周期リズムの 1 細胞レベルの実験では、遺伝子特異的に摂動を与えつつ応答を計測するような、計測と制御を同時に行う技術が無かった。そのため、短周期リズムは周期などの基本情報はよく調べられているが、外部刺激に対して 1 細胞レベルでどの程度ロバストでどのように応答するのかといった、システムの動的デザインが未解明である。

最近、我々は青色光受容タンパク質 VIVID を使った青色光誘導性転写活性化システム (LightOn システム)によって遺伝子発現の短時間(2~3 時間)周期の振動を人工的に誘導できることを発見した(参考文献[4])。この光操作技術を 1 細胞イメージングと組み合わせることで、外部刺激に対する 1 細胞レベルの転写活性の動的応答を定量計測することが可能になりつつある。 本発表では、遺伝子発現ダイナミクスの可視化と光操作の技術的な概要を紹介するとともに、転写因子 Hes1 の短周期リズムを光操作しながら 1 細胞レベルの動的応答を計測した例について発表する。


  • 参考文献

[1] J. E. Purvis and G. Lahav Cell 152, 945 (2013). [2] J. H. Levine, Y. Lin and M. B. Elowitz Science 342, 1193 (2013). [3] A. Isomura and R. Kageyama Development 141, 3627 (2014). [4] I. Imayoshi†, A. Isomura†, Y. Harima, K. Kawaguchi, H. Kori, H. Miyachi, T. Fujiwara, F. Ishidate and R. Kageyama Science 342, 1203 (2013).

創って分かるタンパク質分子の動作原理(Synthetic approach for understanding working principles of protein molecules)

  • 講演者:古賀信康(分子科学研究所協奏分子システム研究センター)
  • 要旨:タンパク質分子はアミノ酸配列に従い、ほどけた紐のような状態から特異的な 3次元立体構造を形成し機能を発現する。1958年に世界で初めてタンパク質分 子の立体構造が解かれてから半世紀以上が経ち,現在ではタンパク質立体構造 データベースには約10万件以上もの構造が登録されている。しかし,これら 自然界のタンパク質分子は何十億年という長い年月をかけて進化した結果であ り、それらを解析するのみでは自然が創り上げたタンパク質分子の動作原理の 本質に辿りつくことは難しい。そこで,立体構造形成や機能発現に関する様々 な仮説を立てながらタンパク質分子を計算機上でデザインし,それらが実際に どのように動作するのか実験により調べるというアプローチが力を発揮する。 すなわち、タンパク質分子を実際に創ることにより、立体構造形成および機能 発現の原理を探り、望みのタンパク質分子を自在に設計する技術を開発するの である。我々はこれまでに、タンパク質の機能をひとまず横に置き、構造形成 に最適化したタンパク質構造をゼロから創ることで、タンパク質の立体構造形 成原理について明らかにしてきた。本講演では、これらの成果と伴に、機能性 タンパク質のデザインについての展望を述べる。
  • 参考文献:Sarel J. Fleishman, Andrew Leaver-Fay, Jacob E. Corn, Eva-Maria Strauch, Sagar D. Khare, Nobuyasu Koga, Justin Ashworth, Paul Murphy, Florian Richter, Gordon Lemmon, Jens Meiler, and David Baker RosettaScripts: A Scripting Language Interface to the Rosetta Macromolecular Modeling Suite PLoS ONE, 6(6), 1-10, 2011 Nobuyasu Koga, Rie Tatsumi-Koga, Gaohua Liu, Rong Xiao, Thomas B. Acton, Gaetano T. Montelione and David Baker Principles for designing ideal protein structures, Nature, 491(7423), 222-227, 2012

タイトルTBA

  • 鈴木誉保(農業生物資源研究所)

ショートトークセッション